6度目の学生王座(引き分け1回含む)をかけて甲子園へ乗り込んだ法政大学トマホークス。RB#29原やWR#81栗原ら強力な攻撃陣を擁し関西大に挑んだものの、守備やスペシャルチームのミスで得点を重ねられ、惜しくも学生王座を目前に涙をのむ結果となった。 試合は法政大のレシーブでスタート。この1stシリーズで法政大は9分を超えるロングドライブでエンドゾーン目前まで迫り、先制FGを決める。しかし「最初のシリーズでTDを取れなかったのが痛かった、あれで関西大を落ち着かせてしまったかもしれない」(青木監督)。冷静さを取り戻した関西大に次の攻撃シリーズで逆転のTDを奪われてしまう。 ここで一度落ち着きを取り戻したい法政大であったが、甲子園という大舞台が選手たちを必要以上に舞い上がらせた、「チーム全体の気分があがってしまい、身体がついていかなかった」(主将DL#44徳田)と、普段の冷静さを欠いてしまう。RB #29原も「試合の序盤に、関西大の守備に外を走らされてしまった。もっと最初から縦に走っていればゲイン出来ていた」と語り、なかなか思うようなプレーができない時間が続く。 特に攻撃では、若手の司令塔2人のミスで2Qだけで2度のターンオーバーを喫し、苦しい展開となる。しかし2Q終盤には、看板のランプレーが通りはじめ、終了直前にRB#99楠原のTDランなどで追撃を見せ、16-17と1点差で前半を折り返す。 ハーフタイムのアジャストでなんとか関西大の勢いを止めたい法政大であったが、関西大の勢いを止めることができず、ずるずると引き離されてしまう。 「関西大のプレー自体は春と大きく変わってはいなかった。しかし個々の選手の力が春よりも遥かに強かった」と語る主将の徳田。また「相手QBに対する守備の対応がまずかった、あれだけヒットに強い選手なのだから、もっと守備の枚数を増やして対応するべきだった」と、青木監督が悔やむように関西大QB#14原口の中央突破を封じることがなかなかできない。 一方攻撃に関しては、3Q中盤から徐々にリズムをつかみ始める。3Q12分59秒には、エースWR#81栗原が執念のランアフターキャッチで追撃のTDパスを決める。 しかしこの流れを一変させたのが、関西大RB#1藤森の走り。この試合、リターンの際に再三ロングゲインしていた藤森がここでも快走。痛恨のキックオフリターンTDが決まり、点差を広げられてしまう。 「スペシャルチームの対応は事前にやっていたが、試合終盤には攻撃や守備と両面でキックチームに入る選手もおり、全力で走れない選手と全力で走れる選手の間にスペースができてしまい、そこを相手に突かれてしまった」と徳田が語るように、試合終盤は攻守ともに疲労の色が隠せなくなってしまった。 攻撃でも、甲子園までチームをけん引したWR#81栗原が元々の故障を悪化させ、RB#99楠原も故障でフィールドに立てない時間が続き、RB#29原への負担だけが増加する状況となる。 だが原は「きつかったけど、決して最後までバテなかった、けがで出られなかったRB#28堀の分までプレーしようと思っていた」と、獅子奮迅の活躍で勝利を信じ、幾度もTDシーンを演出した。 しかし最後まで守備陣が関西大のグランドアタックを封じることができず、試合終了直前にQB#14原口の68ヤード独走TDを許してしまう。 法政大攻撃も最後まで反撃を試みるが、QB#4山口も疲労で握力が弱まりパスが決まらず、最後は4thダウンギャンブルでQBサックを食らい万事窮す。攻撃権を奪った関西大が時計を刻み、38-50のスコアで敗北を喫した。 「今年のチームは一番叱ったチーム。だからこそ勝たせたかったし、勝てると思っていた。負けたのは我々コーチングスタッフの責任。学生達に申し訳がない」。 試合終了後、真っ先に青木監督の口から出たのは、敗北の悔しさと学生達への謝罪であった。甲子園ボウル敢闘賞を受賞したRB#29原も「自分がもっと走れれば勝てた試合」と悔しさをあらわにする。 来季の法政大は、チームを大きく牽引していたRB#29原やWR #81栗原らがチームを去り、苦しい状況が予想される。しかし「ミスをした選手は若手が多かったので、この経験を来年へ活かしてほしい」と青木監督。この悔しさをぜひ来年へつなげてもらいたい。 「QBのせいで負けてしまった。課題がたくさん出たので、これを春に改善して、何10点でも取れるような強い法政になって甲子園に帰ってきたい」(QB#4山口)。彼らのシーズンはすでに始まっている。記事/早坂茂(スポーツ法政OB)写真/P-TALK http://www.p-talk.jp/編集/畠中隆好(OfficeNEAR)