どん底からの復活劇。聖地を再び青く染め上げる。

4年連続53回目の甲子園ボウル出場を決めた関西学院大学ファイターズ。昨年はライバル立命大を2度撃破し、2年ぶりの学生日本一に輝いた。だが、「学生圧倒」を目標に掲げた今季。長く、険しい道のりが待ち受けていた。

リーグ戦序盤から王者らしからぬ試合の連続だった。開幕3連勝で迎えた第4節神戸大戦。先制のチャンスでQB#3奥野がインターセプトを許すと、捨て身で向かってくる相手に大苦戦。2点差で何とか勝利を収めたものの、今後に不安を残した。さらに第6節関西大戦では、第4Qまでの得点はFGのみ。絶対的エースの不在が、チームを苦しめた。

リーグ最終節立命大戦。今年から西日本代表校決定戦のシステムが変更となり、是が非でも1位通過を決めたい一戦。だが、気迫のこもった相手の攻撃に終始圧倒された。ラン獲得ヤードはわずか13ヤードに終わり、7―18で完敗。王者が涙にくれた。

敗戦後、主将DL#52寺岡芳樹が語った。「完全に勝ちボケしていた。相手が昨年の1点(関学大20-19立命大/西日本代表校決定戦)を取り返しにくるという恐怖を分かっていなかった」。チームはリーグ2位相当、西日本代表校2回戦進出となり、3週連続で試合という、過密日程を強いられることとなった。

負けを知ったチームが、大きな変貌を遂げた。西南学院大、神戸大を下して迎えた立命大との西日本代表校決定戦。総合力で上回る相手を磨き上げた渾身の一撃で貫いた。第1Q開始早々、エースRB#21三宅が71ヤードを独走TD。さらに5分後にも37ヤードを走り切り、14点のリードを奪った。

ディフェンス陣も気持ちでブロック。3つのターンオーバーを奪い、前回から劇的な変貌を遂げた。寺岡は「前回は最初から気持ちが折れてしまった。今回は気持ちでのみ込もうと戦えた」と胸を張った。

今年のオフェンスはやはりQB奥野が中心となる。昨年並みの活躍はまだ見られないものの、エースQBのスクランブル能力は脅威となる。OLは春シーズンから苦しんだが、ようやく安定してきた。RBはリーグ戦で5TDを挙げた三宅をはじめ、#26前田(公)や#27齋藤と多彩。いかにしてランナーを通すかが鍵となる。

一方ディフェンスは、経験豊富な選手がそろう。寺岡をはじめとするDL陣は、サイズがあり強力。LBはスピードとパワーを兼ね備える#44海﨑、#40繁治の3年生コンビが壁となる。DBは昨年から主力としてプレーするのは#45畑中のみ。戦力ダウンが懸念されたが、リーグ戦を通して#25竹原、#42宮城ら下級生が成長。この最後の砦が、早稲田の好QB#1柴崎のパスアタックを封じる。

2年連続30回目の学生日本一を目指すファイターズ。今季は鳥内秀晃監督のラストイヤーでもある。負けて終わるわけにはいかない。寺岡は「自分たちのできるフットボールをして、攻めて勝つこと。最後に勝利をもぎ取れるように泥臭く戦う」と意気込んだ。

一度どん底を味わった青き戦士。聖地でスローガン『BLUEOUT』を体現し、有終の美を飾る。

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記事:玉越裕基(関西学院大学体育会学生本部編集部)
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写真;P-TALK
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編集;畠中隆好(甲子園ボウルPJT)