news大会みどころ〜学生界最強守備対決 突破口を見出すのは? by Huddle Magazine

2022.12.17

菱電機杯第77回甲子園ボウルのみどころ

 

学生界最強守備対決.        突破口を見出すのは?

強力フロントと高ターンオーバー奪取力を誇る関西学院大学守備の迫力

 

7年連続56度目出場の関西学院大学ファイターズと、3年ぶり7度目出場の早稲田大学ビッグベアーズ。両雄が甲子園ボウルで激突するのは3年ぶり4回目。過去3回はいずれも関学大が勝利している。4度目の対戦はどんな結果になるのか、両雄のこれまでの戦いぶりから予想してみた。


 

5年連続33回目の優勝を目指す関学大の強みは、なんと言っても1試合平均9失点しか許していない強力な守備だ。特にラン守備は1試合平均25.3ヤードしか前進を許していないという驚異的な成績を残している。これは、守備フロントのロスタックルの多さに起因している。リーグ中盤からの先発昇格ながら、関西大戦、立命館大戦で大活躍を演じてシーズン4QBサックを記録し、関西学生リーグ最優秀選手賞を受賞したDEトゥロター・ショーン礼(3年)は象徴的な存在だ。

 

LB陣は中心だった海﨑琢(3年)が関西大戦で負傷しシーズンアウトとなったが、SF永井励(2年)を急遽LBにコンバート。永井がLBとしてプレーするのは関西大倉高時代以来だったが、立命館大戦ではアグレッシブにLOSにアタックしてトゥロターと共に立命館大の攻撃にプレッシャーを与え続けた。

 

もう一つ、関学大守備の強みとなっているのは1試合平均3.0回におよぶターンオーバー奪取力だ。関西大戦では2ファンブル・フォース、2リカバー、立命館大戦でも1インターセプトを記録したトゥロターの果たしている役割は大きい。もう一人、現在、最も勢いに乗っているのがSF中野遼司(2年)だ。関西大戦では第3Qに決勝点となるインターセプトリターンTDを挙げ、立命館大戦でも序盤にインターセプトでチャンスを作った。

 

 

対応力に優れる早稲田大守備

 

1試合平均失点14.7点はリーグ3位ながら1試合平均喪失212.7ヤード、ラン喪失81.6ヤードは関東1位を記録している早稲田大も、守備が安定していることが強みになっているチームだ。

今季は早稲田大学高等学院のHCを務める吉田昌一コーチが守備コーディネーターとして参画。今や早稲田大でも看板となっているオリジナルの2DL守備の考案者である吉田守備コーディネーターのもう一つの優れた点は、試合中のアジャスト能力の高さだ。

 

付随して今季の早稲田大守備の大きな特徴となっているのは、フィールドでの実践力の高さだ。理論上は対応できても実行できなければ机上の空論になってしまうが、選手一人ひとりのフットボールインテリジェンスと、各ポジションの連携が、対応力の高さとなって表れている。

 

各ユニットの人材も、高レベルで安定している。DLは思い切りのよいユニットに仕上がっている。中でも196センチ120キロと規格外のサイズを持つ山田琳太郎(4年)は、LOSの突破力に優れるビッグプレーメーカーだ。LB大蔵泰斗(4年)は、堅実なタックル力もさることながら、守備フロントの要としてDBとの連携のハブ的役割を担っている。

 

DBも選手層が厚い。中でも中心になっているのはSF間瀬琢巳(4年)だ。早大学院時代から吉田コーディネーターの守備を経験し、戦術的な理解は最も深い。しかも、今季はリーグトップとなる4インターセプトを記録しているゲーム・チェンジャーだ。

 

 

強力守備をどちらの攻撃が崩すか?

 

互いに強力な守備を擁したチーム同士の対戦となる今回の甲子園ボウルは、裏を返せばどちらの攻撃が突破口を見いだせるかが、勝敗を分けるポイントになる。

 

今季の関学大の攻撃は、リーグ戦を通じて安定感に欠けていた。パス獲得距離は2位ながら、得点力、ラン獲得距離はリーグ4位、総獲得距離リーグ3位と、数字上の成績を見ても関西学生リーグの中では『中の上』という位置づけだ。攻撃のドライブ力という点においては、近年の力強さは感じられないが、甲子園ボウルは一発勝負である。故にこの試合用に準備したプレーでモメンタムを掴むようなビッグプレーを生み出すことは十分に可能であり、関学大が伝統的に得意とすることろだ。

 

それを実現できるスキルポジションのタレントは十分にそろえている。WR糸川幹人、梅津一馬、河原林佑太の4年生トリオ、鈴木崇与、衣笠吉彦の3年生コンビは、QB鎌田陽大(3年)の強肩を生かせる実力の持ち主たちだ。また、抜群のクイックネスと走力、1年生らしからぬ強心臓を持つQB星野秀太は、守備のプレッシャーを無力化できる。

 

池田唯人(3年)、伊丹翔栄(2年)のRB陣もポテンシャルは高い。また、RBだけでなくWR、ワイルドキャットQBとしてマルチに起用されている前島仁(3年)は、大一番で数々のビッグプレーを演じてきた存在であり、早稲田大にとっては最も警戒しなければならない選手と言っても過言ではない。

 

早稲田大の攻撃の強みは強力なユニットに成長したOLのブロック力を生かした豊富なRB陣による安定したラン攻撃だ。

関東大学リーグ最優秀選手賞を受賞したLT亀井理陽(4年)を筆頭に、LB飯田星河(2年)、C永田直野(4年)、RG笹隈弘起(4年)、RT

村山浩暉(4年)が今季のベストラインアップだ。亀井、永田、笹隈、村山の4年生4人は高校野球出身という異色のユニットである。

 

花宮圭一郎(3年)、安村充生(3年)、萩原奎樹(3年)、田村光(4年)のRB陣は高レベルで実力が拮抗しており、シーズン中から激しい出場争いを続けてきた。また、ワンポイント起用されているQB石原勇志(4年)は、第3ダウンやゴール前など、勝負所で必要な距離を稼ぐことができる信頼度が髙いランナーだ。

 

攻撃を率いる先発2年目のQB國元孝凱(3年)は、パサータイプ。ランが安定したことによって、得意のパスも生きるようになってきた。レシーバーは学生界トップクラスのスピードを持つ佐久間優毅(4年)がエース。上野陸(3年)、目黒歩偉(3年)、入江優佑(2年)の主力3人もレベルが髙い。

 

上記の特徴からそれぞれの勝利のシナリオを予想すると、関学大は守備とキッキング、ビッグプレーによって好フィールドポジションを作り出し、攻撃になるべく負担をかけずに得点するという展開が理想だろう。

 

一方、早稲田大はランでコツコツと前進を積み重ねて関学大から攻撃時間を奪いながら好ポジションを作り出す展開に持ち込みたいところだ。

 

いずれにしても鍵を握っているのは、トゥロターを擁する関学大のDLT亀井が率いる早稲田大のOLの攻防になる。この戦いを制した方が勝利に大きく近づくことになるだろう。

 

Text: 月刊ハドルマガジン編集長 上村弘文

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