9年ぶりにオレンジのユニフォームが甲子園に帰ってきた。トマホークスから愛称を変更して以来、初の出場となる甲子園の舞台で、法政"ORANGE"が6度目の日本一に挑む。
今年4月、新主将となったLB太田成哉にチームの目標を聞くと「日本一」と答えた。「現状に満足せず、常に向上心を持って練習に臨んでいる」。2ブロック制となった昨年のリーグ戦では3勝1敗。唯一の敗戦相手だった日大は甲子園ボウルへ進出した。チームテーマは「執念」。攻守とも戦力が整いつつある中で逃してしまった優勝、そして日本一を「執念」で取り戻すべく2021年のオレンジは始動した。
春季オープン戦では、TOP8で優勝を争ってきた早大や日大相手に連勝し、結果は全勝。QB 平井やRB星野など主力へ成長した3年や新キッカー露峰の台頭と、秋に向けた準備は着実に整っていた。夏合宿を行うことはできなかったものの、選手たちの日本一への想いは自信に変わった。
そして迎えた秋季リーグ戦。初戦の相手は昨年と同じく日大。この試合が今年の法政に勢いをつけた。2Q終了間際、QB平井からのパスを受け取ったWR小山がRB星野へ後ろ向きのパス。受け取った星野は63ヤードを駆け抜けTDを決めた。「スポット&ラテラル」のトリックプレーで逆転すると、同点とされた3Qには星野が97ヤードのキックオフリターンTD。星野が後のリーグ戦での活躍を予感させた2つのビッグプレーを決め35-28で勝利。その後も立教、中央に連勝し迎えた早稲田との優勝決定戦。前半で大きくリードするも、後半には猛攻に遭い我慢の時間が続く中、4Qには副将LB山田のインターセプトなど熱いディフェンスで攻撃を止め切ると、最後はRB新井のTDで勝負を決めた。
熱戦の末9年ぶりの優勝を勝ち取ったが、試合後のチームには笑顔は無く、誰もこの結果には満足していなかった。「勝てたことは嬉しいが課題がまだある(星野)」「日本一になるまで泣いたり喜んだりしない(太田)」。会見での彼らの表情には日本一への強い意志が表れていた。
学生主体でチームを組織し、攻撃や守備を組み立てる選手の意識は、常に「日本一」だけを見据え、チームの課題を共有し、互いを鼓舞することで成長を続けてきた。本番を前に「あと3ヶ月しないとチームは完成しない」「まだ伸び代がある」と語る有澤HCの言葉からは、発展途上のチームのポテンシャルの高さが窺える。
混戦だった今年の関東TOP8を、3年生を中心としたチームで制した法政オレンジ。強力かつ豊富な戦略で得点を狙うオフェンス。昨年のタレントを受け継ぐディフェンス。帰ってきた名門法政は関西の高い壁をどう打ち破ってくれるだろうか。
記事:川口綜一朗(スポーツ法政新聞会)
写真:宮川昇、川口綜一朗(スポーツ法政新聞会)
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