読売テレビで長く関西学生アメフトの実況を担当し、アメフトの名物アナとしてファンにも知られている尾山憲一氏から4Qを迎える甲子園ボウルに寄稿頂きました。放送室からみた学生アメフト、甲子園ボウルの魅力とは!
西日本代表校はまた関西学院大学ですか・・・
実情を知らない方からは、もしかするとそんな声が届くかもしれません。
かつて、関学の卒業生にとって聖地:甲子園は ‘同窓会’ の場と聞いたことがあります。毎年のように甲子園ボウルへ出場していた関学ファイターズ。OB達にとっての聖地巡礼はもはや恒例行事でした。しかし、80年代京都大学の台頭による関京時代、94年立命館大学リーグ初優勝からの3強時代はまさに戦国時代。近年は関学と立命館のマッチレース。現在のレギュレーションでは、賛否はあるものの、立命館と2度の対戦を経ないと西日本代表校になれないのです。そんな中、関学が6年連続で甲子園に出場できているのは、選手だけでなく監督・コーチの魂が結集しているからです。
では、なぜ、関学の監督やコーチが、自身の生活のすべてを学生達に注げるのか?
答えは「悔しさ」です。悔しさが彼らを奮い立たせるのです。京大や立命館という大きな壁、仮にその壁を突破しても関東の大学にも苦しんだ経験があるスタッフ達がほとんどなのです。
2021年、第76回大会。相手は9年ぶりの甲子園となる法政大学。久しぶりの聖地降臨です。以前、法政大が甲子園をオレンジ色で沸かせた頃は、甲子園球場のライトからレフトに横にフィールドを作っていました。外野のスタンドは関西代表チームの応援団、内野のマウンド付近に設営された簡易スタンドに関東代表チームの応援団というやや歪な配置でした。開催地が兵庫県西宮市であるが故に、ある意味仕方ないかもしれませんが、関東代表校にとってアウェイ感は否めなかったでしょう。
しかし、甲子園ボウルが東西王座決定戦から全日本大学選手権になってからは、フィールドを縦に作り、1・3塁のアルプススタンドに平等に応援団が入れるようになりました。両校の応援合戦は見応えありです。ただ、これからの大会や競技の繁栄を考えるなら、そろそろ東日本代表校vs西日本代表校の図式から脱却しないといけません。全日本大学選手権と銘打ちながら、代表校決定への道のりが東西で違いすぎます。平等な方式の末、関学vs立命館の甲子園ボウルがあっても良いと思いますし、法政vs早稲田の甲子園ボウルがあっても良いのです。大学ラグビーにおける帝京vs早稲田の決勝戦に疑問を持つ方はおそらくいないはずです。
近年、西日本代表校が学生日本一に君臨している理由は開催地だけの問題ではありません。毎年対決するリーグ戦において、ライバルと言われるチームとの闘いに向けて、寝る間も惜しんでしのぎを削っているからです。宿敵に勝った側が涙し、敗れた側は誇らしげに胸を張る姿を毎年見続けました。リスペクトできる宿敵(ライバル)や強敵(友)の存在、悔しさ悲しさが彼らを強くさせます。
だから西日本代表校は強いのです。
アメリカンフットボールがここまで普及し、関西では文化の1つとして育まれてきた経緯に甲子園というステージは欠かせません。今年から甲子園ボウルが学生最後の試合になりますが、聖地:甲子園で関学ブルーが躍動し、同窓生がスタンドで歓喜するシーンが目に浮かびます。時代は次のステージへと進みますが、西日本の代表校の思いは変わらずに受け継がれていくに違いありません。
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