west02関西代表注目選手

関西代表・関西学院大学ファイターズ


WR #1 糸川幹人(4年)


   最強の男が甲子園に帰ってきた。WR糸川幹人はどんなボールもキャッチしてみせる。過去の甲子園ボウルでは2年生ながらロングパスT Dを決めるなど、輝かしいプレーで注目の的に。今年もビッグプレーを巻き起こす関学1のキーマンだ。

 糸川の才覚が発揮された。秋リーグ最終節、因縁の立命大戦にてQB星野が投じた35㍎ものロングパスをキャッチ。ゴール前5㍎まで迫り、停滞していた流れを一変させた。「ずっと練習してきたプレー。成功させられて良かった」。その後、再び短いパスを受け先制TD。「ロングパスで得点を挙げたかった」とチームに貢献したことを喜ぶ反面、満足のいく試合内容にはならなかった。

 常に最前線を走る糸川だが、3年の秋にけがに見舞われ、試合に出場できず。「プレーできないことが悔しかった」。復帰までの間は、後輩たちへの指導に尽力。小学生の時、フラッグフットボールを始め、中学1年生から池田ワイルドボアーズに所属していた。さらに、箕面自由学園高時代には日本代表に選ばれた経歴を持つ糸川。長年の経験を生かし、感覚だけでなく頭を使ってプレーすることをアドバイスした。「後輩がミスするのは自分の責任」。フィールドに戻るまでにも新たな経験を積み、上級生としての成長を遂げた。

 副将という重責を背負うまでには苦悩があった。「自分は先輩として上に立てる人間なのか」。幹部になることを悩んでいた糸川。寄り添ったのは、3年前副将を務めたWR阿部拓朗(20年卒)だった。兄のように支えてくれた阿部から幾度もアドバイスを受け、ようやく副将になることを決意。「自分は熱いこと言うタイプではない」。プレーで引っ張る副将として、チームをけん引することを決めた。

 「いい選手になった」。いよいよ糸川も最終学年。プレーに対する考えにも変化が訪れた。自分1人の力で勝つのでなく、チーム全員の力で勝つ。どうしたらファイターズが勝てるのか。勝利につながるプレーとは何かを模索し続けた。甲子園ボウルに向けて「オフェンスの強みを出し切れていない」という課題を抱える一方、個人としてもやり残したことがある。「まだ爆発的な力を発揮できていない」。さらなる高みを目指す糸川の目標は「今までとは一味違うプレーをする」こと。聖地・甲子園での糸川の活躍から目が離せない。

 

記事:梶原京(関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツ)
写真;関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツhttps://kgsports.net

RB #7 前島仁(3年)


   今年も、この男が甲子園の舞台で大暴れする。RB前島は昨年の甲子園ボウルにて当時2年生ながら68㍎を駆け抜ける独走TDを披露。4連覇に向け、チームを大きく後押しした。今年度の秋リーグでも、4TDに成功し167㍎を獲得。関学1のランプレーヤーとして圧倒的な強さを記録で証明した。「厳しい試合が続いたが、自分の走りで全勝に貢献できたと思う」と前島。関大、立命大戦など要所でチャンスをつくってみせた。

 最強世代が去った後、感じた不安は大きかった。不動のエースとして常に前線を走り続けたRB前田公昭(22年卒)とRB齋藤陸(22年卒)の引退後、最上級生不在となったRBパート。「自分たちがチームの穴になってしまうのでは」と焦りやプレッシャーを感じたと言う。そこで、前島は同じく3年生のパートリーダーであるRB池田唯人とともにパート全体の底上げに尽力。「4年生と同様の努力をしなければ強くなれない」。3年生としてではなく、最上級生として常に先頭に立ち続けた。

 2年時には、一時WRへとポジション転向。高校時にはQBを務めたこともあり、その器用さを買われての起用だった。それまでのRBとしての経験値を捨て、1から成長を重ねた前島。「どれにも専念することができず、1つを極めることが難しかった」。想定外のポジション変更に対し、思い悩んだ。しかし、その苦しみは思わぬところで才能を開花させる。

 ついに3年生となり、RBへ復帰。すると、RBとしてのプレーだけでなくスペシャルプレーにも抜てきされるように。実際に、神大戦では前島独自のプレーでTDに成功。「正直報われないなと感じていたときもあった。でも、ようやく自分だけの立ち位置を確立できたと思う」。長く続いた苦難の日々。乗り越えた先には、確かな栄光が待っていた。

 「まだ納得のいくプレーはできていない」。今年度も抜群の成績でチームをけん引したが、求めるレベルはさらに上だ。RBとしての独走と、マルチなプレーでの活躍の二兎を追う。「前島仁の本領発揮はここから」。重要な場面で決め切る力を自身の強みに挙げ、大舞台でもその実力を遺憾なく発揮する。ついに迎えた3度目の甲子園。前島の多彩なプレーが見るものすべての目を奪う。

記事:

谷村彩瑚(関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツ)
写真;関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツhttps://kgsports.net

OL #72 牛尾海 (4年)


   ラストイヤーに熱い思いを抱く男がいた。OL牛尾海は、フィジカルを生かした強い当たりを武器とするプレイヤー。4年間数多くの試合に出場し、着実に経験を積み重ね
てきた。しかし「まだ納得のいく試合はできていない」と牛尾は言う。残りわずかとなった選手生活。悔しさを胸に、最後の戦いに闘志を燃やす。

 中学生からアメフトを始めた牛尾。啓明学院中に入学した彼に声を掛けたのは、2020年度主将を務めた鶴留だった。彼の誘いをきっかけに、牛尾の人生はアメフト1色に染まる先輩の縁もあり、大学でもファイターズに入部することを決意。入学後、彼は早くも頭角を現す。「関学のOLはミスに対する意識が高い。その中で練習させてもらっていたので、当時はとてもしんどかった」。下級生ながらにフィールドに立つと、多大なプレッシャーと責任を負うことに。「その経験があったから今の自分がいる」と牛尾。辛さを乗り越えたからこそ、実感できた成長があった。

 順風満帆な道のりを歩んでいた。しかし、牛尾は昨年度の秋リーグ第、京大戦でのミスをきっかけにスターティングメンバーから外れることとなる。タックルとガードの2つのポジションで2枚目となった牛尾。「絶対スタメンを取り返すという気持ちで準備していた」と当時を振り返る。悔しさを自らのパワーに還元し、常に前を向き続けた。

「OLが永遠の課題」。パートリーダーを務める牛尾にとって、その言葉の重圧は大きい。「4年生で試合に出ているのは自分だけ。後輩たちを引っ張っていかないと」。チームの勝利のために、内向的だった自分の殻を破り捨てた。「練習での取り組みを試合で最大限発揮したい」。まだ納得のいくプレーを発揮できずにいるオフェンス陣。ラストチャンスをものにすべく、彼は精進し続ける。

 泣いても笑っても最後の戦いだ。「独走TDをRBにさせてあげられていない」。自身の役目を果たせていないことを心残りに思う牛尾。最高学年としての自覚と責任を持ち、甲子園ボウルでエンドゾーンへの道を切り開く。



 記事:藤本実耶(関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツ)
 写真;関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツhttps://kgsports.net

DL #74 山本大地(4年)

 

   日本一にはこの男の存在が欠かせない。DL山本大地副将率いるディフェンス陣は今年度のファイターズ始動以来、チームの危機を幾度となく救ってきた。全勝同士の対決となった関大戦では、ラン獲得ヤードを68㍎に抑える健闘。続く立命大戦でも、総獲得ヤード246㍎に対しラン69㍎とDL陣が鉄壁ぶりを見せた。「最初から良かったわけでは全くない。1つずつ課題を潰していった」。激闘の中で一歩ずつ着実に進化を遂げてきたDL陣。その中心には、いつも山本がいた。

アメフトを始めたのは高校生のとき。当時から体重は85㌔を超え、2年生ながら副将を務めた。「学年や経験の有無に関わらず、強い奴らに絶対勝ちたいという思いがあった」と山本。センスだけでなく、人一倍の負けん気で自身をさらに強化していった。大学進学時には多くの先輩たちが他大学へ入学する中、コーチの後押しもあり1人関学を選択。「ファイターズは本気で日本一を目指す場所。他とは比べ物にならない成長ができる」。闘争心が山本をさらなる高みへと導いた。

青戦士の一員となった大学1年時から早くもVチームに抜てき。しかし、順風満帆な道のりとはいかなかった。「関学には独自のファンダメンタルがあり、責任も細部までこだわる」。楽しむことを重視していた高校時との違いに苦しんだ山本。「とにかく1つ1つの動きにまで気を使わなければいけない。特に下級生の頃は頭を使ってプレーしろと言われていた」。ミスを恐れた時期もあったと言う。それでも「絶対に負けたくなかった」。諦めず、何度も何度も練習を続けた山本。2年時には監督と個別でトレーニングを実施した。その甲斐あってめきめきと成果を上げ、現在のポジションに定着。苦難の道を歩んだからこそ、いまの不動の強さがある。

今年度は、スタメンとして多くの下級生が出場を果たしている。「上級生が少ない分、しんどいときに俺が背中で見せないと」。最上級生として、副将として多くの責任を負う山本。先頭に立ち、パワーとスピードを両立した守備でどんな攻撃も防ぐ。「キックや攻撃がどんなに決まらなくても、ディフェンスが倒されなければ負けない」。無敵のタックルでいざ、日本の頂へ。「何があっても、俺が止めてみせる」。甲子園の舞台でも、山本の鉄壁が崩れることは決してない。



記事:谷村彩瑚(関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツ)
写真;関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツhttps://kgsports.net

LB #50 浦野玄太(4年)


   関学のディフェンスチームに欠かせない。LB浦野玄太がスタメンに起用されたのは今年度から。下級生の間は思うように試合に出られなかったが、ラストイヤーにすべてを懸けた。すると秋シーズンでは開幕戦からスターティングメンバーに浦野の名前が。そこからほぼ全試合、先発の座を守り抜きビッグゲームでも活躍を見せている。

 父の友人の誘いからアメフトを始めた浦野。千里ファイティングビーに小学2年生から所属し、経験を積んできた。競技歴は今年で実に15年目。蓄積してきたアメフトの知識が今の彼の強みに。「身体能力が高いわけでも、体が大きいわけでもないから賢さで勝負する」。長年培ってきた経験を武器に、関学の守備の要を担ってきた。

 常に頭の片隅には亡くなった5歳上の兄の存在があった。当時、浦野は中学1年生、兄の遼平さんは高校3年生。同じく箕面自由学園高でプレーする姿を見ていたため「自分がこのチームを引っ張って日本一を目指したい」。主将としてチームを先導することを決めた。しかし、全国大会準決勝にて立命館宇治高に負け、結果は全国ベスト4。目標には届かなかったものの「やり切った」と当時を振り返った。

 「兄ができなかった分、自分が続ける」。1度はアメフトをやめることを考えた浦野だったが、やはり背中を押してくれたのは兄の存在だった。そして「本気でやるなら日本一を目指さないと面白くない」。そんな思いから関学に入学することを決意した。だが、ここは強者ぞろいのファイターズ。なかなか出場の機会は巡ってこなかった。「自分は詰めが甘い」。ストイックに自身と向き合い、努力を積み重ねてきた。

 ついに迎えたラストイヤー。「最後に自分のやりたいディフェンスをつくる」とディフェンスリーダーに立候補した。今年度は、ディフェンスチームの成長が著しい。立命大戦では「ディフェンスのボックス内は100点」と大村監督に言わしめた。しかし、現段階では彼らの理想の姿には到達していない。「無失点に抑え、ディフェンスで勝つ試合を」。1年間目指してきたチームの完成形を、甲子園で披露する。
 

記事:早川茜(関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツ)
写真;関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツhttps://kgsports.net

DB #24 山本昌弥 (4年)

 

  再びフィールドに返り咲いた。DB山本昌弥は秋リーグ第6節、関大戦にてキッキングメンバーとして試合に出場。約1年間、脳震盪に苦しむも、大きな壁を乗り越え劇的な復活を遂げた。

 アメフトを始めたのは小学校1年生の頃だ。母親の勧めで上ケ原ブルーナイツに入団。「ずっと憧れだった」。当時からファイターズを意識していた山本。「自分もここでアメフトがしたい」。幼い頃から抱き続けてきた長年の夢を実現させた。

 2年生からスターティングメンバーに抜てきされ、秋季リーグでは全試合にディフェンスメンバーとして出場。下級生ながらに豊富な経験を積み、メンバーたちが厚い信頼を寄せる選手へと成長した。「自分にしか言えないことがある」。自らの経験や知識を生かしたアドバイスを日頃から同期や後輩に伝える山本。彼の存在はチームの成長に大きく関与している。

 順調に思われた山本のアメフト人生に大きな変化が訪れる。昨年度の秋リーグ第3節、関大戦。相手からの強いヒットを受けて脳震盪に。リハビリを重ねながら活動を続けるも、痛みは治まらず。先が見えない現状に苦しみ、今年の1月に手術を決意した。術後、復帰の目安は6月。「そこを目指してやり続けていたが、間に合わなかった」。それどころか、症状は悪化。「もうアメフトはできないかもしれない」。任されていた副将を辞退し、チームを去った。

 「もう1度、昌弥のプレーが見たい」。彼の復帰を待ちわびる仲間たちがいた。「チームに関われずしんどかったし、すごく辛かった」と山本。自分の帰りを待ってくれているチームメイトのためにも、ここで諦める訳にはいかない。地道な努力を積み重ね、ついに彼はフィールドに戻ってきた。復帰後初試合は、奇しくも昨年度けがをした関大戦。「こんな自分を待ってくれていたことに『ありがとう』と言いたい」。久しぶりの試合は感謝の気持ちで溢れていた。

 「今シーズンでの取り組みは間違っていなかったということを勝って証明したい」。甲子園ボウルに対する熱い思いを語った。「フィールドにいる時も、サイドラインにいる時も自分ができることはある」。ディフェンス無失点の目標を達成すべく、自身のプレーと行動でチームを勝利へ導く。

 

記事:藤本実耶(関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツ)
写真;関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツhttps://kgsports.net

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