Raad to 甲子園ボウル:ニュース
トピックス 2014.12.11

全日大学選手権決勝 パナソニック杯第69回毎日甲子園ボウルの見どころ

 4年連続49回目出場の関西学院大学ファイターズと、2年連続33回目出場の日大学フェニックス。甲子園での対戦は最多の28回目。過去の対戦成績は、日大が16勝9敗2分と勝ち越しているが、2007年、2011年、2013年の近年3回の対戦はいずれも関学が勝利している。甲子園ボウル最多出場を誇る関学はこれまで22勝22敗4分。勝ち越しがかかった大会でもある。一方、日大にとっては1990年以来、24年ぶり19回目の優勝を懸けた一戦だ。28回目の『赤と青のライバルリー』の見どころを探ってみた。

【日大攻撃vs関学守備】

日大QB高橋、WR岩松、西村のホットラインと関学SF国吉、小池、CB田中・小椋の攻防

 日大攻撃対関学守備の見どころは、日大のパス攻撃と関学守備の攻防だ。近年2回の対戦ではDBとLBを深く一列に配置して、アンダーゾーンを意図的に広く開け、日大のプレーをそこに集中させ、ビッグプレーを阻止する関学守備の作戦が功を奏した。2011年の対戦では日大攻撃にTDを許さず、1FGに抑え、9失点だった昨年は、試合の大勢が決した終盤に1TDを許したのみだった。

 雪辱を期す日大攻撃は、先発2年目のQB高橋率いるパスアタックが威力を発揮している。メインターゲットはWR岩松、西村の3年生コンビだ。岩松はリーグ戦37回捕球614ヤード6TDで、関東TOP8のリーディングレシーバーとなり、関東学生リーグ戦MVPを受賞。その岩松にわずかに及ばなかった西村は、32捕球526ヤード4TDで、リーグ2位の捕球成績だった。昨年は内側のレシーバーだった岩松は、今季は外レシーバーを兼任。LBにはスピードで、DBにはパワーで、アドバンテージを握ることができる。QB高橋は体幹の強化に取り組み、課題だった球威が向上。昨年よりもスムーズにロングパスを投げられるようになった。

NUP_QB18_HUDDLE.JPG 関学守備は伝統的にDB陣のレベルが高い。先発唯一の4年生SF国吉は、リーグ最終節の立命戦で自らの責任のゾーンを守りつつ、背後の別のゾーンに飛んできたパスをインターセプトに仕留める離れ業を演じてみせた。レシーバーから転向2年目のCB田中は、今や学生界トップクラスに成長。1年生ながら先発に抜擢されたCB小椋は168センチの小兵。しかし抜群の運動センスを持ち、フィジカルにも強く、立命戦では最初の攻撃をインターセプトに仕留め、試合の流れを作った。リーグ2位タイの3インターセプトを記録したSF小池は182センチの長身。対戦する攻撃の特徴によってラン守備にも積極参加する関学守備のキーパーソンだ。

関学守備のもう一つの強みは、LBに確実なタックルを決められる人材が揃っていることだ。先発4年目のベテランMLB小野は、すべてのプレーに絡む勢い。180センチ89キロの大型LB山岸は、今年7月の第3回U19世界選手権に日本代表キャプテンとして参加。海外選手との対戦経験を通じ、一段階上のスピードと爆発力を身につけて、ビッグプレーメーカーとして活躍している。OLB作道は思い切りがよく、攻撃のブロッキングスキームを破壊する役割を担う。

またプレー開始前の動きで相手OL陣の混乱を誘い、QBサックに仕留めるのが関学守備フロントの『得意技』。若手中心の日大OL陣が、幻惑されずにQB高橋を守り切ることができるのか。スクリメージライン上の攻防も見どころの一つになるだろう。

【関学攻撃vs対日大守備】

QB斎藤率いる関学パスユニットの本領発揮なるか?"ロスタックル王"日大主将DE宮田のラッシュを軸に挑む日大守備

 関学攻撃はリーグ戦で力を発揮できていない印象だった。先発2年目のQB斎藤は、113投67回成功856ヤード6TD6被INTと、数字上は昨年を大きく下回る成績に終わった。しかし、際どいタイミングでパスを通すことにチャレンジした結果とみることもできる。いずれにしても甲子園ボウルは、斎藤の進化と真価が問われる戦いになりそうだ。

KG_QB11_HUDDLE.JPG

頼もしいのはレシーバー陣に昨年来の主力がほとんど残っていることだろう。堅実な捕球力でシーズンを通じて安定した活躍だったWR横山、大型でフィジカルにカバーを突破できる木下、レシーバー随一のスピードを持つ木戸。さらに、5歳からのフットボール経験に裏打ちされたカバーを読むセンスを持ち、「1対1は絶対に負けない」と、斎藤が信頼を寄せる大園が、終盤戦から調子を上げてきている。

ラン攻撃はオープン、密集問わず鋭く走る技術を身につけた主将RB鷺野と若きパワーパック橋本のコンビが担う。関学は伝統的に様々な形のカウンタープレーで守備の足を止めるのが得意なチームだ。立命戦ではプレー間の時間を極端に短くした『超アップテンポ』のノーハドル攻撃で、守備の対応力と体力を奪う作戦を実行した。複雑な戦術を実行するためには、C松井、T井若ら若手OLの実践力発揮が鍵になるだろう。

KG_RB28_HUDDLE.JPG

 対する日大守備はフロントのプレッシャーとDB陣の連携が鍵になる。今季は関東1位のシーズン10ロスタックル2ファンブルフォースの主将DE宮田が、猛烈なラッシュで若手中心の守備フロントをけん引してきた。

NUP_DE90_HUDDLE.JPG

LB陣は、守備システムと対戦攻撃の意図の理解に長けたILB佐藤が核。OLBからILBに転向した趙は、リーグ最終節の法政戦で、4Qに反撃を断ち切るロスタックルを決めるなど、新ポジションで思い切りの良さを発揮するようになってきた。OLB岩本はパスカバーにも長けているため、パスが想定される状況においてもメンバー交代をせず、5DBと同じ陣容を作ることができる。

CB森、井上、SF下水流、柳の先発DB陣は全員がインターセプトを奪っている。メンバーを固定し、連携の向上を図った効果が出ているようだ。日大守備が思い切り動き続け、関学攻撃のタイミングを狂わすことができるかが焦点となりそうだ。


記事と写真;上村弘文(アメフット専門デジタル雑誌『ハドルマガジン』発行人)

http://www.fujisan.co.jp/product/1281696257/

編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

TOPページへ