東日本代表校決定戦は、関東学生リーグの聖地・アミノバイタルフィールドで開催された。過去には、日大や早大といった関東TOP8勢が万全の勝利をもって代表の座を勝ち得ている。
連続出場になる東北大学ホーネッツのキックオフで試合開始。その低い弾道とイレギュラーバウンドで、日本大学フェニックスの陣地に深く切り込んだ。
日大は自陣10ヤードからスタート。深い位置からの攻撃にもかかわらず、日大は慌てることなくプレーに集中していた。
今年の日大を象徴するパスとランを組み合わせたバランスアタック。その多彩なプレー選択に東北大は翻弄され、あっという間に東北大陣まで運ばれTD。試合開始2分22秒のことだった。
続く東北大の攻撃に対しても、日大の冷静さはまったく変わらない。相手の攻撃に対して的確なタックルと囲い込みを行ない、簡単にはダウン更新を許さない。
「勝つための練習をしてきたが、ありとあらゆる場面、要所を完全に抑えられてしまった」と、東北大の主将LB#13佐竹は悔しそうに話す。
今春から東北大のメインフィールドである川内グラウンドは、人工芝に生まれ変わった。地下鉄の駅から出ると目の前が東北大のキャンパス、そこで厳しい練習を積んできたホーネッツだ。分厚いOL陣を活かしての重厚なオフェンスではあったが、それでもエンドゾーンは遥かに遠い。
2Qが始まってようやくFG1本を決めたが、すでにこの時点で3-21。結局、前半はこれ以上の得点を奪うことができずに、前半終了で3-42という大差がついてしまった。
東北大の遠藤監督は「力の差があることは分かっていたが、日大とは想定以上の力の差を感じた。チームで出来ることは、すべて真っ当したと思うが、それでも全然届かなかった」と、静かに語った。
後半、日大は先発メンバーを大幅に交代させながらも、ディフェンスで相手を抑え、堅実なオフェンスで攻めあげて、次々にTDを奪っていく。
だが東北大はここで気持ちを切らせはしなかった。敗戦濃厚だったとしても、ただ懸命に戦い続けた。
高校時代はスポーツ未経験ながら、雪国・青森の東奥義塾高から東北大へ進学。その体格の良さを見込まれてフットボールを始めたというOL#66小舘は、雪深い津軽の粘り強さと、“じょっぱり魂”をもって、日大DLに倒されても、LBに潰されても這いあがり、とことん立ち向かっていった。
なんとか一矢報いたい東北大。
3Q終了直前、エースQB#1長谷部が左オープンのランから、エンドゾーン左隅へと執念のTD。ここまで耐えてきたチームに報い、1年間積み重ねてきたトレーニングを実らせた瞬間だった。
続くTFPでも2ポイントコンバージョンを成功させ、8点を獲得。もちろんこれだけでは届かないが、日大の隙を見逃さなかった。
東北大応援団とチアリーダーにブラスバンド、OBや関係者などが東北新幹線に乗って駆け付けた緑色のバックスタンドが、ようやく拍手と大歓声に沸いた。
「TDは取りましたが、それ以上に、自分のインターセプトなどから大量得点になってしまって、もう、なにも言えないくらい…」。試合後の会見では、なかなか言葉にならないQB長谷部だった。
最終スコアは日大77-17東北大。結果で見るならば完全なワンサイドゲームだが、互いに全力を出し、そして課題を自覚する結果となった。
「本当は0点に抑えるつもりだった」と、振り返る日大の内田監督。
日大の山崎主将は「交代メンバーを入れ始めて、そこでミスが出てしまった。甲子園ボウルではこういうミスは致命的になってしまう、そのあたりをしっかり修正していきたい」と、反省する。
次は決勝・甲子園ボウル。いまだ西高東低が続く大学フットボールシーンにおいて、関東の雄、日大に集まる期待は大きい。
伝統の甲子園ボウルを目指しいま一度。東北大は4年生が引退して新しいチームへ。それぞれが次への道へと歩みを進める。
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記事;津島治(スポーツライター)
写真;関東学生アメリカンフットボール連盟
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)