QB #3 奥野耕世(3年)言わずと知れた関学のエースQBだ。QB奥野耕世は、プレーが崩れてからのスクランブル能力を武器とするモビリティパサー。昨年から不動のスターターとして攻撃陣をけん引してきた。

昨年はQB光藤(19年卒)、QB西野(19年卒)とともに『三本の矢』を形成。2年ぶりの学生日本一に貢献した。関学大では、07年に受賞したQB三原(08年卒)以来となる甲子園ボウル最優秀選手、年間最優秀選手(チャック・ミルズ杯)のダブル受賞。1年間で凄まじい成長を遂げた。

今年は2人の主力QBが抜け、エースとして独り立ちが求められた奥野。自覚は行動となって現れた。春シーズンはケガで1試合の出場に終わるも、試合中はオフェンスのプレーコールを担当。試合中から下級生QBを積極的にアドバイスをし、チームの底上げを図ってきた。「光藤さんと西野さんから基本的なプレーだけでなく、QBとして周りに厳しく求める姿勢を教わった。今年は自分がその立場になろうと思った」。秋シーズンへ向け、充実した春を送った。

だが、苦しい現実を突き付けられた。秋季リーグ開幕戦で戦線復帰を果たすも、第1節の同志社戦はパス成功率がわずか55%。第3節の京都大戦では、50%を切った。奥野の不調とともに、チームも下降線をたどる。

第4節の神戸大戦では、自身が許したインターセプトから流れを失い、2点差の辛勝。リーグ最終節の立命館戦では、2つのインターセプトを許し、チームは敗北を喫した。

TDパスの数はリーグ最多の7本を決めるものの、「決められるはずのパスが全然決められていない」。思い通りにいかない自身を悔やんだ。

立命館にリベンジを果たした西日本代表校決定戦。ここでもエースQBは本調子に至らなかった。14回の試投でパス獲得ヤードは83ヤード。ダメ押しのTDパスを決めたものの、昨年観客を魅了した驚異のスクランブルは、なりを潜めた。

「リーグ戦は思い通りにいかなかったが、甲子園ではリズムよくオフェンスを進めて、学生日本一に貢献できるように頑張りたい」。この男の復活なしに目標の『学生圧倒』は果たせない。昨年、最高の景色を見た聖地で復活を果たすのか。エースQBの真価が問われる。

記事:玉越裕基(関西学院大学体育会学生本部編集部)https://kgsports.net/
写真;P-TALK   http://www.p-talk.jp/
編集;畠中隆好(甲子園ボウルPJT)

WR #81 阿部拓朗(4年)楕円球が描くアーチの先にいるのはWR阿部拓朗だ。阿部は3年時からスタメンとして試合に出場。昨秋はWR松井(19年卒)、小田(19年卒)と強力なWRパートを形成し、リーグ通算レシーブ24回390ヤードを獲得、3TDを決めた。ビッグゲームでも数々のTDで観客を魅了。今年は副将として、エースWRとしてチームをけん引している。

今季のリーグ通算捕球回数がチーム2位の18回、計253ヤードを獲得。リーグ第5節の近畿大戦で2TD、リーグ第6節の関西大戦でもTDを決めた。だが、リーグ最終節の立命館戦では、TDを決められず。チームも敗北した。「自分が活躍できなかった以上に、チームの敗北が悔しい」。甲子園ボウルへの出場を決めた西日本代表校決定戦でも、「ホッとした反面『学生圧倒』とは程遠い内容の試合だった」。エースWRとして、チームの勝利に貢献できなかった自身の力不足を痛感した。

今季は新星の躍進に救われた。シーズン序盤からスタメン出場しているWR糸川や、西日本代表校準決勝の神戸大戦でTDを決めたWR河原林ら下級生が活躍。「自分が1年生の時には考えられないくらい頑張っている」と、率直な心境を話す。

阿部は1年のリーグ戦期間中に鎖骨を骨折。練習もできず、悔しい思いをした。「自分が出られないんやったらいい」と、投げやりになった時期もあった。だが最終学年となった今季、後輩の活躍が何よりも自身の原動力となっている。

今度は自分が活躍する姿を見せる番だ。昨年の甲子園ボウルはスタメン出場。尊敬してやまないQB光藤(19年卒)を「日本一の主将にしたい」と臨み、補球回数はチームトップの成績を収めた。だがTDは取れず、納得のいく結果とはならなかった。「前回取れなかった分、今年こそは大舞台で取りたい」。聖地でのTDに闘志を燃やす。

泣いても笑っても最後の甲子園。「学生圧倒」できる最後のチャンス。エース阿部がチームに流れを引き寄せ、必ず早稲田を圧倒する。

記事:河合里奈(関西学院大学体育会学生本部編集部)https://kgsports.net
写真;P-TALK   http://www.p-talk.jp/

編集;畠中隆好(甲子園ボウルPJT)

RB #21 三宅昂輝(3年)

今年のチームにこの男は欠かせない。RB三宅昴輝は、誰もが認めるエースRBだ。昨年の甲子園ボウルで頭角を現し、2年生ながら学生日本一に貢献。3年生になるとスタメンに定着し、今秋のリーグ戦では5TDを挙げた。今年の甲子園ボウルでも、その俊足を活かした独走TDに期待が膨らむ。

昨年はビッグゲームで自信と覚悟を胸に刻んだ。昨年のエースRB山口(19年卒)の負傷もあり、リーグ終盤戦から多くの出場機会を得た。甲子園ボウルでは41ヤードの独走TD。チームトップの103ヤードを獲得した。ライスボウルではスタメン出場を果たし、ランでチームトップの36ヤードをゲイン。突如現れた若武者はその名を全国に知らしめた。

「レベルの高い相手と対峙して、自分の走りを再確認できた」。スピードで走り勝つ快速RB。絶対的エースへと一歩近づいた瞬間だった。

エースRBへの気持ちは固い。今季は下級生RBも台頭。エース三宅と言えども、うかうかしている暇はない。「刺激を受けている。自分も頑張らないと」。上級生としての自覚とともに、自分がパートを引っ張っていく気持ちが芽生え始めた。武器であるスピード、カットバックを「後輩にも伝えられたら」。三宅はパートの要となる存在だ。

信頼が鍵となった。なかなかOLが隙をつくれず、自慢の独走を披露できずにいた原因は意思疎通の不足にあった。「もっと強みの独走を決めたい」。プレーへのこだわりで、練習中からOLとともに相手ディフェンスの反応の速さを映像で確認。話し合いを重ねることで、徐々に信頼関係が生まれ、リーグ後半戦は独走を連発した。「OLが道を開けてくれたおかげ」。甲子園でもあうんの呼吸で得点を量産する。

道のりはまだまだ終わらない。迎える2度目の大舞台。昨年甲子園を沸かせた若きRBはエースへと成長を遂げ、この地に帰ってきた。狙うは学生日本一ただ一つ。「慢心せずに、甲子園でも独走する」。聖地での活躍を誓い三宅は走る。チーム全員の想いを乗せて。

記事:津田理於子(関西学院大学体育会学生本部編集部)https://kgsports.net/
写真;P-TALK    http://www.p-talk.jp/
編集;畠中隆好(甲子園ボウルPJT)

DL #50 板敷勁至(4年)
DL板敷勁至は、関学が誇る鉄壁のDLだ。今年からスタメンに定着。威厳ある堅い表情の奥に、熱い闘志を持っている。DLにしては小さな体格も、スピードと頭脳を武器にディフェンスの最前線に君臨し続けている。アメリカンフットボールを始めたのは6年前。高校時はOL、TEパートに所属。大学入学後、守備陣に加わりLBとしての道のりを歩み始めるも、2年時の2月にDLへと転向。戦力不足のためのコンバートだったが、「使ってもらえるならどこでもやる」と、チームに貢献したい一心で、日々鍛錬に励んだ。手始めに取り組んだのは「スピードトレーニング」。落ちてくるボールに対し、瞬時に反応することで瞬発力を鍛える練習だ。そこで培われたスピードは、独自の強みになった。さらに、小中学時代に経験した空手と総合格闘技で培った力強いタックルを生かし、DLとして徐々に出場機会をつかんだ。

その努力が結果となって現れる。今年6月に行われたエレコム神戸との神戸ボウル。Xリーグの強豪相手に2本のQBサックを決めた。「やってきたことを思い切りぶつけた」。試合は引き分けに終わったが、見事敢闘賞を受賞。実力を見せつけ、一躍その名をとどろかせた。

悔しい思いも味わった。秋季リーグ第2節の龍谷大戦から3試合の戦線離脱。チームは、第4節の神戸大戦で大苦戦。学生圧倒を掲げているにも関わらず、わずか2点差の辛勝だった。「情けない」。サイドラインから見守ることしかできなかった自分に、釈然としない思いを募らせた。再びフィールドに立ち、勝利を収めるために―。早期復帰へ、気持ちを奮い立たせた。

西日本代表校準決勝で神戸大との再戦。板敷は見事な復活劇を演じた。強烈なタックルとファンブルリターンがさく裂。前回の悔しさを拭い去った。続く立命館との決定戦では、圧巻の3連続QBサック。計18ヤードを後退させ、赤豹の脅威を封じ込んだ。執念を見せた力強いプレーで甲子園ボウル出場に貢献した。

不退転の覚悟で臨む。再び舞い戻ってきた、甲子園の大舞台。いつも支えてくれる家族のために。熱い声援を送ってくれるファンのために。そして何よりも、チームのために。最後の学生対決、勝って笑うのは板敷だ。

記事:山西葉月(関西学院大学体育会学生本部編集部)https://kgsports.net/
写真;P-TALK   http://www.p-talk.jp/
編集;畠中隆好(甲子園ボウルPJT)

LB#40繁治亮依(3年)
フィールドでひと際存在感を放つ男がいる。LB繁治亮依は昨年のリーグ戦からスタメン出場。今季は全ての試合にスターターとして出場し、ディフェンスの中心を担っている。昨年の秋季リーグ第6節の関西大戦。試合は70年ぶりの引き分けに終わった。悔しさを胸に、練習ではアサイメントを再確認。頭で整理し、フィールドに出て実行した。努力を重ね、迎えた2週間後の立命館戦。繁治のタックル数はチームトップの7回をマーク。若きLBが赤豹に何度も襲い掛かった。だが試合後の評価は「可もなく不可もなく」。決して満足はしなかった。3年生になった今季は、苦しいシーズンだった。保守的なプレーに終始し、自身の力を発揮できない。リーグ初戦から出場しているメンバーの中で、繁治だけがプライズ(インターセプトなどのビッグプレーを起こした選手に贈られるもの)を獲得できていなかった。「俺はダサい」。後輩に示しがつかない日々。チームに貢献できていない自分に嫌気がさした。

だが繁治の意識が大きく変わったのは、関西大が最大のライバルである立命館に勝ったときだった。「立命館の前に関西大を圧倒する」。絶対に落とせない試合を前に、「学生圧倒」への気持ちが強くなった。それはプレーにも現れ、これまでの不調を払拭するQBサック。強い繁治が帰ってきた瞬間だった。

切磋琢磨できる同期の存在が繁治を強くしている。同じポジションの海﨑は、1年時からスタメンとして活躍。2年時からは繁治もスタメン出場し、ともにLBとして相手の攻撃を食い止めてきた。試合出場経験が海﨑よりも浅い繁治にとって、「尊敬できるし、ライバルでもある」。海﨑の熱い姿に感化され、ともに苦しい練習を乗り越えてきた。3年生LBコンビが、甲子園でも躍動する。

真骨頂を見せつける。2年連続で早稲田と激突する甲子園ボウル。繁治にとって2回目の大舞台だ。3年生になり、プレーだけでなく声でも引っ張る繁治。ディフェンスの要となる男が、聖地でチームを学生日本一へ導く。

記事:津田理於子(関西学院大学体育会学生本部編集部)https://kgsports.net/
写真;P-TALK    http://www.p-talk.jp/
編集;畠中隆好(甲子園ボウルPJT)

DB#20松本紘輔(4年)
どんな相手にも臆さず飛び掛かる。DB松本紘輔は、他のDBパートの選手と比べると小柄だが、引けを取らないパワフルなプレーで相手を止めてきた。今年はパートリーダーとして誰よりも声を出す熱き戦士。下級生がプレーしやすいよう、雰囲気づくりにも力を入れてきた。大一番で魅せた圧巻のインターセプト。立命館との西日本代表校決定戦。21―10と関学大リードで迎えた第4Q。相手QBから放たれた大きなアーチを遮った。相手に行きかけた流れを完全に取り返すインターセプト。今年のDBパートのスローガン「Game Changer」を見事に体現した。高校生以来のインターセプトに「めちゃくちゃうれしい」と喜びを爆発させた。試合後には後輩や同期と何度も抱き合い、涙する松本。これまでの苦しさや悔しさ、様々な思いが溢れた。下級生時はケガによりJV戦にもほとんど出場できず。ようやく成長するチャンスが来た昨年も、再び負傷に泣かされた。思い通りにいかず、腐りかけた。2年時にはスタッフに転向する話も持ち掛けられたが、松本にはどうしても忘れられない言葉があった。

2017年の甲子園ボウルで関学大は日本大に敗北。誰もがその屈辱を晴らしたいと語る悪夢だ。その時のDBパートリーダーだった小椋(18年卒)に言われた言葉、「苦しくても逃げるな、お前なら絶対できる」。気持ちが折れそうな時にはこの言葉を思い出し、心を奮い立たせた。「腐らず続けてきて良かった」。挫折の先にあったのは今までに見たことのない景色だった。

共に戦ってきた仲間と最後まで全力で走り抜ける。今年のDBパートは、ディフェンスリーダーの畑中とアナライジングスタッフの天春とともに、責任を持つと覚悟を決めてやってきた。

誰が出ても勝てるDBパートを目標に夜遅くまでミーティングを重ね、時には喧嘩もした。「あの2人がいなかったらここにいない」。本気でぶつかり合ったからこそ、ここまで来られた。最後の聖地・甲子園。「学生圧倒」するまでは止まらない。最強のDBパートが流れを変え、勝利を呼び込む。

記事:河合里奈(関西学院大学体育会学生本部編集部) https://kgsports.net/
写真;P-TALK   http://www.p-talk.jp/
編集;畠中隆好(甲子園ボウルPJT)