bowlgame甲子園ボウルとは 〜ボウルゲームについて〜

毎日甲子園ボウル(以下“甲子園ボウル”)の「ボウル/BOWL」についてご存じだろうか。

実は2つの意味がある。1つめはフットボール・スタジアムの別称だ。サラダボウルのように『丼ぶり/すり鉢』のような形をしていることからそう呼ばれるようになった。そして2つめがその「ボウル」で特別な機会に開催される試合のことで“甲子園ボウル”も大会の命名者(葉室鐵夫氏/2005年10月30日逝去)が、そのことにこだわった結果、この会場でこの名が付いた。

🏈まずは全米カレッジ・フットボールの“いろは”を知ろう!

では、ボウルゲームとは何か。起源はやはり本場アメリカ、それも大学(カレッジ)フットボールにある。より深く甲子園ボウルを知ってもらうため、元になったカレッジ・フットボールについて説明していこう。

 アメリカの主要大学はすべて全米体育協会(NCAA)に加入しており、さらにそのほとんどがカンファレンスに加盟している。カンファレンスとは、日本の大学野球でいう東京六大学や関西六大学のようなものだが、日本とは違って競技別ではなく、大学の体育局全体で加入するのが特徴だ。つまりアメフトのみならずすべての競技で争うため、カンファレンス内の大学間でライバル関係が発生するのである。

このような構成の中でアメフト・チームを持つ全米強豪校の133校(フットボール・ボウル・サブディビジョン/FBS 旧称:Division 1-A)が集まるカンファレンスは、主に太平洋岸の州に位置し南カリフォルニア大(USC)やUCLA、ワシントン大やオレゴン大など日本でも馴染み深い12校で構成するパシフィック12(通称パック12)や、フロリダ州立大、クレムソン大などの東南部14校で構成するビッグ12、ジョージア大やアラバマ大など南部を中心とした大学14校が所属するSEC、ミシガン大やオハイオ州立大など東北部の14 大学が所属するビッグ10、テキサス大、オクラホマ大など南西部を中心とした14校によるビッグ12の5カンファレンスを軸に、広大な国土をユニークに体現する合計10のカンファレンスがある。またノートルダム大や陸軍士官学校のようにカンファレンスに属さない”独立校”も少数存在しているのもアメリカの学び・学生スポーツ界の多様性の知ることができる。

なお近年はスポーツビジネス拡大の影響を受けた巨額の放映権料や興行収入を求めて、長年在籍していたカンファレンスを離れて他のカンファレンスに移籍する大学も出始めるなど、ここ数年はカンファレンス構成の大規模な地殻変動が起きており、毎年、目を離せない状態となっている。

ちなみにスポーツよりも、伝統・学問で有名なアイビーリーグも上記強豪校FSBとは一つ下の130校で構成されるFCB(フットボール・チャンピオンシップ・サブディビジョン 旧称:Division 1-AA)に所属するカンファレンスの一つ。更に下部組織としてDiv. II(160校)、Div. III(240校)が存在し、NCAA傘下のアメフト・チームを持つ大学群だけでも700校近くあり、アメリカのカレッジ・フットボール界ピラミッドの巨大さと層の厚さを構成しているのも特筆だ。

🏈カレッジ・フットボール・シーズンは?

カレッジ・フットボールのシーズンは、NCAA規定ではレギュラーシーズン・ゲームは最大13試合と定められており、各校はこの中で8月末からカンファレンス内リーグ戦や他カンファレンス所属校との交流戦を行う。アメフトの開催日は伝統的に金曜日夜に高校、土曜日はカレッジ、日曜日はプロのNFLと住み分けされていたが、近年はTV放映などの収益を求めてカレッジゲームが金曜日や平日、祝日などに開催されることも増えて来ている。なお秋も深まるレギュラーシーズンの最終戦は同じ街に位置するUSC対UCLAのようなライバル校同士や、同州内の公立・オレゴン州立大対私立・オレゴン大戦、東西の名門私立大のノートルダム大対スタンフォード大などの伝統の定期戦などが組まれる。更に所属校が多いカンファレンスでは2つの地区に分け、レギュラーシーズン上位校同士による優勝決定戦を行うところもあり、カレッジ・フットボールファン達はシーズン開幕前から最終戦まで手に汗を握る息を抜けない日々が続く。こうした長いシーズンを戦い抜き、優秀な成績をおさめたチームに与えられるのが12月中旬から1月上旬にかけて全米各地で開催される”ボウルゲーム”への出場権だ。いわばご褒美なのである。

🏈ボウルゲームあれこれ

全米各地で数多く催されるボウルゲームにあって、殊に正月に開催される現在のメジャー・ボウルゲームは、1月中旬に開催される全米No.1を決定するナショナル・チャンピオンシップ試合へのセミファイナル試合の役割も果たすようになっているが、いまだそのネームバリューと商業価値、影響力は強大である。と言うのも、過去の多くのボウルゲームは各開催委員が独自の運営を行い、伝統的に招待する大学のカンファレンスを決めているところが多く、開催地の経済界や政界との繋がりも非常に深い関係にあった。中でも1902年から始まり、カリフォルニア州パサデナで開催されるローズボウルはマザー・オブ・オール・ボウルゲームズと呼ばれるほどで、元旦の早朝から盛大に開かれるローズ・パレードと共にアメリカお正月の一大風物詩となっている。ちなみに試合会場としてのローズボウルの観客席数は92,542席、試合自体はパック12とビッグ10の首位対決で数々の名試合が記録に残っている。こうしたボウルゲームの長い歴史と招待制度によって、カンファレンス間の強烈なライバル意識を育て、競技の実力アップを図って来た経緯がある。

他のボウルゲーム名称には地元特産品を冠したものが多く、ジョージア州アトランタで開催されるピーチボウル、フロリダ州マイアミのオレンジボウル、ルイジアナ州ニューオーリンズのシュガーボウル、テキサス州ダラスのコットンボウル、アリゾナ州テンピでのフィエスタボウルがある。この新年6大ボウル(New year’s 6と呼ばれる)は、その翌週の1月中旬に中立地で開催される全米王座決定戦『ナショナル・チャンピオンシップ』試合に向けたセミファイナル2試合の会場として毎年持ち回りで巡回利用される。

2023年~24年のNCAAのトップに位置するFBSでは上記のセミファイナル、チャンピオンシップ試合を含む合計43のボウルゲームが開催される予定である。前述のメジャー・ボウルゲーム以外にも伝統的なゲームも多いが、近年はスポーツビジネス拡大の波に乗り、新興スポンサーの社名だけを冠したボウルゲームも数多く誕生し、スポンサーによってコロコロと名称も変わり、開催地さえ想像もつかないボウルゲームさえ誕生している。こうなるとFBS所属校133校のうちの80チームが招待され、勝率5割に届かないチームが出場することにもなり得てしまい、試合の質はもとよりボウルゲーム存在の威信と権威、ファンの関心さえ失ってしまうのでは?との議論も起きている。しかしながら激しいシーズンを頑張りぬいたプレーヤー達や在学生達、地元の熱心なブースター達に取っての試合は一生の思い出として残る試合になるに違いない。ボウルゲームとはそれほどアメリカ人の心に訴えるものなのだ。

🏈全米王座決定戦とランキングシステム

2014年度より、全米133校を抱えるFBSでのトップ校を決定すべき全米王座決定戦『ナショナル・チャンピオンシップ』が開催、これはまさに頂上2校が直接対戦して雌雄を決するト“甲子園ボウル”に該当する。

チーム選出については12月月上旬にカレッジ・フットボール・プレーオフ/CFPの選考委員会/コミッティーからレギュラーシーズンの最終ランキング25位が発表され、上位4校が元旦に開催されるプレーオフ・セミファイナル(メジャー・ボウルゲーム2試合)へ出場、そしてその勝者2チームが1月中旬の月曜日に中立地で開催される『ナショナル・チャンピオンシップ』に駒を進める運びとなる。

このトーナメント形式のフォーマットは2025年シーズンまで継続されるので、その後もベスト4チームによるプレーオフが継続されるのか、8チーム等に拡大されるのか?など今から話題も尽きない。

我々日本人に馴染みの薄いのがランキングシステムだ。アメリカは日本の約24倍の国土面積を持ち、FBSの130を超える全校がトーナメント戦で行えない状況にある。そこでカレッジ・フットボール界では1920年代から長年に渡りランキングシステムが利用されて来た。現行のCFPシステムでも選考委員会が毎週明けに週間ランキングを発表し継続採用されている。最終ランキングではシーズン序盤で強豪校相手に負け試合を記録したチームがその後盛り返し、強豪校対戦が無いままシーズンを全勝無敗で乗り切ったチームより上位にランクされるなど、当然起こり得る多少のねじれは散見されるものの、最終的に最高峰4チームでの勝ち残りトーナメント実現への道筋を立てる上での評価は高い。

その他のこれまで長年に渡り権威を保ち続けて来たランキングシステムには、1922年から100年以上もの歴史を誇る米国アメリカンフットボール・コーチ協会所属のコーチ達が投票するAFCA Coaches Poll、全米に散らばるフットボール担当記者が投票するAP通信(アソシエーテッドプレス)によるAP Top 25があり、週明けの各メディアにはCFPランキングに加え上記2つのランキングも一緒に表記され論題にあがることが多い。また更には各地方の新聞社やメディアがそれぞれの視点や切り口からの戦力評価を交わし、独自に発表するパワーランキングなどが多数存在するなど、ランキングシステムはカレッジ・フットボールの楽しさと奥行き、そしてその魅力を限りなく豊かなものとしてくれている。

text by 鎌塚俊徳/Toshi Kamazuka