出場チーム紹介
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QB#10安藤和馬

 今年のリーグ最多となる355得点をたたき出した日本大学フェニックス。その爆発的な攻撃力の中核を担うのはフェニックスのエースナンバー10を背負うQB#10安藤和馬だ。安藤は09年に開催された世界ジュニア選手権にも出場し、3年生ながら豊富な試合経験を持つ選手である。
 日本大の歴代QBと言えば松岡、須永に代表されるように投げてよし、走って良しの選手というイメージが強い。安藤もその系譜を受け継ぎ、リーグ戦はパス成功率7割を超え、走力でも俊足を活かし、大事な場面でのダウン更新やTDランを決めている。
さらに特筆すべきは大舞台での勝負強さ。リーグ戦の山場の早稲田大戦、そしてあずまボウルの法政大戦ではインターセプトを許さず、冷静なプレーコールで着実にチームを勝利へと導いている。
 今年の日本大は看板のショットガン隊形にこだわらず、状況に応じてセットバックを選択する等、プレーの幅が広がっている。その分プレーの全権を担うQBへの負担は大きくなるが、安藤はシーズンが進むにつれて安定感を増し、チームの勝利を支えてきた。こうした活躍が認められ、関東学生リーグのMVPに輝いた。今年の日本大は攻守ともに下級生が数多く活躍しているが、その中でも成長著しい選手の一人だ。
 甲子園ボウルで激突する関学大とは毎年春にオープン戦を実施しており、今年は大差で破れる格好となった。さらに07年の甲子園ボウルでも、激しいシーソーゲームの末に破れている。
甲子園ボウルというこれ以上ない雪辱の舞台を与えられた日本大学フェニックス。今年の集大成となるゲームで、安藤がさらなる成長を見せつけ、必ずやチームを勝利に導くことができるだろう。

RB#21原田容人

 日本大といえば誰もが即座に「ショットガン攻撃」と答えるように、故・篠竹前監督が作り上げたパス攻撃を想像するはずだ。しかし今年のチームは空中戦だけでなく、地上戦での強さが印象的である。
リーグ戦ではセットバックも多用し、攻撃の6割でランプレーを選択。総獲得ヤード数でもランで1901ヤード、パスで1220ヤードとランプレーを重視した形となった。
07年には、当時のエースランナーRB#21金雄一の活躍で甲子園ボウルに出場した日本大だが、当時と違い今年のRB陣は特定の選手の活躍だけに偏らないプレーで勝ち抜いてきた。それは結果にも現れており、リーグ戦ではラン獲得ヤードがリーグ3位でありながら、個人記録でベスト5に顔を出す選手がおらず、まさにチーム全員で積み重ねた数字であると言える。
 そうした豊富な選手層のなかでも特にチームを支えているのがRB#21原田容人だ。持ち前のスピードでLOSをすり抜けると、一気に加速し、敵陣までボールを運ぶそのプレーで4年生のRB#4藤田とともにゲインを続けている。
 圧巻のプレーは仙台大との東日本代表決定戦。4Qに自陣でボールを受け取ると、そのままエンドゾーンまで一気に駆け抜けて76ヤードの独走TDを決め、その活躍で東日本選手権のMVPに輝いた。さらにリターナーとしてもリーグ戦でパント、キックオフともにTDを決めており、2年生ながら中心選手としてシーズンを戦い抜いてきた。
近年はショットガン攻撃を採用するチームが増加しているが、そのなかでも核となるRBがいるチームほどパスを活かすことができ、高い攻撃力を発揮している。
甲子園ボウルの舞台に戻ってきた深紅の21番が、チームのエンジンとして日本一へ爆走する。

K#39井ノ口悠剛

 アメリカンフットボールにおいて、ランでもなくパスでもなく、唯一ボールを蹴ることで得点を挙げるFG。オフェンスでもディフェンスでもなくスペシャルチームと言われる役割であり、接戦になればなるほど重要度が増すこの特別なポジションで、キッカーを努めるのが#39井ノ口悠剛だ。
リーグ戦ではTFPを含めたスコアリングキック部門で堂々のトップに輝いた。正確さもさることながら、井ノ口の魅力はボールをゴールへ叩き込む脚力だ。リーグ戦の国士舘大戦ではリーグ新記録となる56ヤードのFGを決め、観客の度肝を抜いた。さらにあずまボウルの法政大戦でも49ヤードのFGを成功させるなど、重要な試合でも自慢の脚力でチームの勝利に貢献している。
その活躍であずまボウルでは、見事MVPにも輝いており、チームの勝利にとって必要不可欠な存在である。
 甲子園ボウルで対戦する関学大は関西学生リーグを全勝で勝ち抜いた強豪であり、接戦となることが予想される。甲子園ボウルの過去の記録を紐解いてみても、キックの成功で勝敗が分かれる場面が数多くあり、井ノ口らスペシャルチームへの重要度がさらに高まる。
奇しくも関学大のK大西は、関学大で活躍した兄を持ち、井ノ口も日大黄金時代の主将を父に持つ。伝統校のDNAを受け継いだ者同士が激突する今年の甲子園ボウル。井ノ口のキックが日本一への扉をこじ開けてみせる。

LB#44天谷謙介

 今夏オーストリアで開催された第4回アメリカンフットボールW杯。この大会に日本代表候補として日本大学フェニックスから唯一招集されたのがLB#44天谷謙介だ。惜しくも最終メンバーに名を連ねることはできなかったが、学生界トップクラスの実力が証明されたことの裏付けとなった。天谷は09年に開催された世界ジュニア選手権にもチームメイトのQB安藤と共に出場し、成長を続けてきた。
 プレーリード、タックルの正確さ、スピード等、LBに求められる資質を高いレベルで持ち合わせており、守備の際には全てのプレーでボールに絡んでいると言っても過言ではない。ランプレーではチームを鼓舞するロスタックル、パスプレーでは粘り強いパスカバーでチームの勝利に貢献してきた。
 守備でモメンタムを掴むことが特徴である今年の日本大にとって、天谷はまさにチームキーマン。特に今年はディフェンスチームのアジャスト能力が向上しており、ゲームが進むにつれて失点が減少し、その安心感が攻撃陣のリズムよいゲインに繋がっている。
早稲田大戦や法政大戦では前半にリードを許しても、ハーフタイムの修正で相手の攻撃を封じ込めてきた。天谷はLBとしてそのようなアジャストにも確実に対応するなど、中心選手として守備陣を支えている。
 甲子園ボウルで激突する関学大は、変幻自在なプレーコールで対戦相手の守備陣を混乱させてきた。そうした変化に対し、逆に守備の側からディスガイズや変則隊形などで駆け引きをすることで、守備からリズムを作り、チームの勝利へ結びつけていきたい。

DL#17ディビッド・モトゥ

 今年の日本大の屋台骨を支えてきたのは鉄壁の守備陣である。リーグ戦1試合あたりの喪失141ヤードと関東ナンバー1を誇るディフェンス力の原動力となったDL#17デイビット・モトゥ。183cm105kgの恵まれた体格から繰り出すパワーに加え、LB並みのスピードを活かしたラッシュはまさに驚異。下級生のころからリーグ戦に常時出場しており、首脳陣からも大きく期待されてきた。昨年まではLBとしてプレーしていたが、今年は主にDEとして起用される場面が多い。相手OLの壁を貫き、一直線にQBへ襲いかかるそのプレーで、関東の各チームが対策に苦慮させる存在となり、その才能を大きく花開かせた。さらにチームメイトからの高い信頼が評価され、フェニックス初の外国人幹部かつ、3年生で副将へ就任。リーグ戦も上位陣と対戦する後半戦から活躍する場面が多く見られ、ロスタックルやQBサックでチームの危機を救ってきた。
関西屈指の好QB畑を擁する関学大のパス攻撃を食い止めるにはライン戦で関学OLをいかにしてコントロールするかが重要になる。特に関西のチームは関東のチームよりも全体的にラインのサイズも大きく、いかに日本大といえども単純なパワー勝負では厳しい場面が出てくるだろう。しかしそうした状況でも、モトゥという1対1でアドバンテージがとれる切り札があればブリッツやパスラッシュの戦略にも幅が出せる。
 遠い異国の地から日本へと渡り、ついにたどり着いた甲子園ボウルの舞台。デイビット・モトゥの規格外のパワーが支える今年の赤い壁は今までとはひと味違う。

DL#92冨田祥太

 リーグ戦1試合平均のラン喪失68ヤード。この数字を出すだけで、今年の日本大守備ラインの強さが判る。特にシーズン終盤の早稲田大、法政大は末吉、堀と好RBを擁するチームと対戦したが、両ランナーを確実に封じ込め、勝利を重ねていった。この鉄壁守備ラインを最上級生として率いるDL#92冨田祥太。180cm120kgのサイズから繰り出すパワーあふれるラッシュは相手OLの壁を打ち砕く破壊神としてLOSに君臨している。
 開幕戦の日体大戦、あずまボウルの法政大戦を除けば、1試合あたり2本以上のTDを許していない守備陣の看板は、やはり冨田らの強力守備ラインだろう。今年は下級生が多い守備ラインであるが、早稲田大、法政大などパワーだけでなくテクニックにも優れた攻撃ラインを相手にしても、チームは動揺することなく自分たちのプレーを続け、強敵を打ち破ってきた。失点を許してもそこからズルズルと崩れることなく、粘り強い姿勢でプレーを続け、攻撃陣の反撃を待つ。攻撃陣もそれに応え、得点をもぎ取る。先行逃げ切りが多かった以前までと違い、今季の特徴である「逆転の日本大」を形成してきたのは、間違いなく安定した守備の力が大きい。
 こうした勢いと安定の2つを重ね合わせた守備ラインは冨田らを中心に1プレー1プレー集中した姿勢で試合に臨んでいる。関東を席巻したパワー集団の守備ラインが120%の力で機能すれば、甲子園の舞台でも関学大の青い壁を打ち破ってくれるだろう。

記事;小坂茂之(スポーツライター)
編集;畠中隆好/OfficeNEAR(甲子園ボウルPJT)
写真;関東学生アメリカンフットボール連盟
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