東日本代表・日本大学フェニックス

QB#10林 大希(1年)

出身は大阪府立大正高。学生プレイヤーだった父親の影響を受けて、幼い頃からフットボールに親しみ、関西の強豪・関大一高に入学したが、2年生への進級時に公立の大正高に転校した。

小学生のときからチェスナットリーグの住吉川86スコーピオンに所属。甲子園ボウルにも少年時代から親しんできた。その豊富な知識と経験が認められ、日大では1年生ながらQBに抜擢された。

ほぼ決め打ちといえるQBキープができる足の速さがあり、そこに鍛えあげられた上腕からの鋭いロングパスを投げ込む強肩の持ち主。QBサックを受けても簡単には崩れない体幹の強さを持った好アスリートだ。

ショットガンからの攻撃でも、センター部分が手薄とあらば、果敢に中央突破に向かう判断の早さを持ち合わせる。

それらの才能をかわれ、新人の1年生ながら日大のエースナンバー“背番号10”を背負うことになった。

林が最初に渡されたユニフォームは13。そのまま秋のリーグ戦に出場していたが、時が満ち、空席となっていた栄えある背番号10に対して、コーチ達から「QBのエースとして自覚して欲しい」という願いから番号変更となり、林はこれを緊張しながら受けた。

「もちろん日大における背番号10の重さは実感している。同時にこの番号を背負うのに相応しい選手になって、フィールドを躍動してみたい」と、林は目を輝かせた。

内田監督は厳しい目で見ながらも「試合を重ねるごとに、どんどん良くなっている」と高く評価する。また林は大勝した試合でも少しの失敗があれば「ミスをなくすことが出来なかった」と厳しく自分を律することが出来る。これは1年生ながら長年の選手経験から、1プレーの重みを知っているからに他ならない。

成長著しく、そんな自分に満足することなく厳しい道を進む、1年生エースQB林。日大フェニックスの未来を託された彼は、いまも成長を続けている。

記事;津島治(スポーツライター)
写真;seesway (KCFA Official Photographer)
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

WR#82 小倉 豪(2年)

1年生QBにエースナンバーの背番号10を託し、3年ぶりの甲子園ボウル出場を果たした日大。その10番のメインターゲットとなったのはエースナンバー25ではなく、82番を着けた2年生レシーバーだった。

リーグ戦7試合で30回389ヤード4TDの記録、関東学生リーグのリーディングレシーバーとなった小倉。リーグ開幕の中央大戦では初のダウン更新となるパスキャッチで、インターセプトで始まった日大攻撃にリズムを取り戻させた。この試合では前半最後の逆転につながるレシーブを含む5回のキャッチで、ラストプレーまでもつれた接戦を制する原動力となった。続く立教大戦では3TDを含む4回のキャッチで大勝に貢献。その後の試合でも確実なキャッチングで、昨年4位に沈んだ日大の復活のキーマンであることを印象づけた。

同学年には大産大附高時代からのチームメイトであるQB室井がいるが、今季エースQBとなった林(大)については「正確な、鋭いパスを投げるQBで、チームの攻撃力があがる」と評価する。「シーズン前からパスの呼吸はできていた」と、ホットラインとしての自負も見せた。

対戦相手の関学については「(関学は)高校時代から凄く強いチーム。そのまま上に行ってさらに強くなっている」と、警戒する小倉。しかし「関学と甲子園の舞台で戦えるのは光栄。春からやってきたことを全てぶつけて、圧倒的に勝ちたい」と、ビッグゲームへの期待に胸が膨らむ。

日大が甲子園ボウルで最後に勝利したのは1990年。関学に勝利したのはその前年’89年の第44回大会まで遡る。関学との対戦成績では勝ち越しているものの、最後に勝利して以来4回大学日本一に挑むも、いずれも関学の前に屈している。日大の復活を決定づけるためには甲子園での勝利が必須。その鍵は新たなるエースナンバーが握っている。

記事;松川達也(関東学生アメリカンフットボール連盟広報委員)
写真;seesway(KCFA Official Photographer)
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

OL#59加倉井 翔(4年/副将)

昨シーズン3勝4敗と、負け越しからの復活を果たした日大。主力メンバーのほとんどが入れ替わるなか、数少ない前年からの主力として攻撃を支えてきた副将・加倉井。

昨年まではキッカーだった松浦をLTにコンバートするなど、「ゼロというよりマイナスからのスタート」(内田監督)だったOLユニットについて加倉井は、「(日大のOLは)どこよりも弱い、という自覚を持ってシーズンに入った。笛がなるまでプレーする、ボールキャリアのところまで行く、といった当たり前のことを誰が出てもやるということを徹底してきた」という。その結果がランで1,543ヤードを稼ぎ出し、7試合で被QBサック4と安定した攻撃に繋がった。

特に初戦の中大戦で被QBサック0に抑えたことは、3点差での勝利に繋がっただけでなく、続くリーグ戦にも勢いをもたらす内容だった。「バックフィールドに下級生が多いので、上級生中心のOLが支えていこう、ということでやってきた」と加倉井。グラウンドの中だけでなく、寮でも話を聞くなど日常のコミュニケーションも大切にしてきた。

3年ぶりの甲子園ボウル。加倉井は「普段は自分たちの応援のほうが多いのに、甲子園では相手の応援のほうが圧倒的。アウェーの雰囲気に飲まれた。いつもならできることができなくなる、そんな感じを味わった」という。関学については「関学は技術だけでなく気力もスゴい。当たり前のことをどこまでできるか、というのが鍵になると思う」と語る。

加倉井が日大に入る前の年、今年と同じく1年生QBを擁して甲子園ボウルに臨んだ日大は、最初のプレーで関学にQBサックを喫して攻撃のリズムを崩した。「あれは自分たちOLのミス」と当時の主将が語ったプレーだ。「ミスなく、当たり前のことを」という加倉井が言葉通りのプレーを出来れば、日大の甲子園ボウル制覇が見えてくる。

記事;松川達也(関東学生アメリカンフットボール連盟広報委員)
写真;seesway(KCFA Official Photographer)
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

K#4篠原歩夢(4年)

九州の長崎日大高時代はサッカー部に所属。日大に入ってからフットボールを始めたサウスポーキッカーだ。

狙ったところに正確に蹴り込むことができる精密なコントロールと、プレッシャーに負けない高い集中力が持ち味。そのコントロールの良さはキックの高さと飛距離さえも自在に操り、キックオフ時には高い弾道でレシーブチームを牽制、またFGトライでは低く鋭い軌道で、ゴールポスト中央を正確に狙う。

今季、日大の重要な得点源だ。「どういうシチュエーションにおいても篠原に任せておけば安心だ。得点が着実に計算できる」。内田監督もその集中力と精度の高さに抜群の信頼を置いている。

今季の出発点となった中大戦では、45ヤードという長距離の同点FGを決めると、くるりと翻りクールな面持ちでベンチへと引き上げていった。TFPキックは27回を全て成功。篠原のキックはTOP8の中でも折り紙つきの実力を誇る。

本人はいたって謙虚な性格で、50ヤードを超えるロングキックを決める日体大のK関根とよく比較されるが「飛距離が全然違う、自分は比べものにならない」と、伏し目がちに謙遜する。

試合中は自分の出場機会まで、バックヤードでネットをめがけて黙々とキックの練習を続け、結果を残そうとする篠原。

「試合中はどのような状況においても、しっかりとキックを決める、ただそれだけ」。

それでもFGトライのたびに緊張してしまうと言うが、与えられた仕事は確実にこなすという強い信念に、チームメイト達は頼もしく思っていることだろう。

篠原という素晴らしいキッカーの存在が、日大フェニックスの勝負強さを支えているのは間違いない。

記事;津島治(スポーツライター)
写真;seesway(KCFA Official Photographer)
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

DB#3ビーティー・ブロンソン(4年/副将)

ハワイ出身の長身選手、フィールドを縦横無尽に駆け回るスピーディーな展開が魅力のDBだ。

相手のラン、パスのどちらに対しても積極的に動き、つねに相手オフェンスにプレッシャーをかけ続けていく。そのスピードから繰り出されるハードタックルは、まさに吹っ飛んでくるタックルと形容するに相応しいだろう。対戦相手からすれば真っ先に警戒したいハードヒッターだ。

パッシングに対しても俊敏な反応をみせ、積極的にインターセプト、確実なパスカットを狙っていく。まさに日大の最終防衛ラインに相応しい選手である。

入部して当初は、日本の環境に慣れず戸惑いもあったようだが、次第に日本に馴染んでくるとともに、チームメイトとのコミュニケーションも深くなっていき、ディフェンスの要、まとめ役としての存在感が大いに増していった。

普段は笑顔の絶えない朗らかな人柄。周囲を明るくさせる雰囲気をまとっている。日本語の習熟度も抜群で、いまでは通訳に頼らなくても、流暢な日本語でのプレーの分析も出来る。

志は高く、明大との試合で4Qに失点を許した際には「シャットアウトでゲームを終わらせなければならなかった」と、最後まで気を緩めたりしない。また「必ず1月まで試合があることを考え、気を引き締めている」と、社会人との決戦となるライスボウル出場を意識しながらプレーに臨んでいるという。

内田監督も守備の要として、主将の山崎とともにブロンソンの名前を挙げ「良くまとめてくれている」と、その信頼は厚い。

「私は内田監督に強くしてもらった。(甲子園で)その恩返しをしたい」とブロンソン。目的意識を新たに、前を見据えてしっかりと言い放った。

日大が誇る守備の要。自らのため、チームのため、恩師のため。溢れる上昇気運はさらなる高みを目指している。

記事;津島治(スポーツライター)
写真;seesway(KCFA Official Photographer)
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

DL#57山崎奨悟(4年/主将)

日大フェニックスの主将としてチームをリードする山崎は、大学世界選手権の日本代表にも選抜された日本を代表するDLである。

相手OLに対して切り込んでいけるフィジカルが強み。ダブルチームのブロックに対しても決して引けを取らない。そのフィジカルの強さを活かしてのタックルは非常に強力で、プレーは積極的にQBサックを狙っていくアグレッシブなディフェンスリーダーだ。

そんな積極的なプレースタイルとは違い、普段の山崎は口数が少なく、日大文理学部にある人工芝フィールドで黙々と練習を積み重ねていく愚直な選手だ。

「走り勝ちのスクリメージ練習に、冬から取り組んで軽く1万5千回くらいの反復トレーニングをしてきた。そういうタフなものがここで活きてきた」。初戦の中央大に息詰まる接戦で勝利し、去年の雪辱を果たした際にこのような言葉を漏らした山崎。昨年は課題であったゲーム終盤のパフォーマンス低下を、厳しい反復練習で克服してきたことの証でもあった。

また春季を含めこのところ負けが続いていた慶大に対して、「勝ちたいという気持ちが強くあった」という言葉ながらに勝利を飾り、リーグ優勝を決めた。

最後に目指すは1年生のときに甲子園ボウルで敗れた関学。山崎は「心の奥底からリベンジしたい」という。非常に負けん気の強い、あるいは悔しさをバネに山崎が甲子園で躍動する。

誰にも負けない強い気持ちを持った彼だからこそ日大の主将として抜擢され、チームメイトから厚く信頼されている。

多くの言葉よりもプレーで下級生と学生スタッフらを惹きつけて、しっかりとまとめ上げる。常に不屈の闘志を持ち続け、勝利のためにひたすら努力することに至高のファイティング精神を見出す、まさにいまの日大を象徴する選手といえよう。

記事;津島治(スポーツライター)
写真;seesway(KCFA Official Photographer)
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)