3日後に控える甲子園ボウルを前に12日(木)、関西学院大学の鳥内秀晃監督と選手ら5人が記者会見に臨んだ。

WR #81 阿部拓朗(4年・池田高出身)

「まだまだ弱い部分もあり、実力でも相手を圧倒出来るという確信はない。しかし、勝つことにこだわって今まで取り組んできた成果を甲子園で出して、接戦だとしてもその中で勝利を掴みたい」と意気込みを語った。

チームとしては12月1日の立命館戦に勝利し、どこかほっとした雰囲気が流れてしまっていたと話す。リーグ戦で立命館に負け、西日本代表校決定戦で勝ち、甲子園ボウルで日本大に負けた2年前の二の舞にならないよう、早稲田を意識してビデオを見たり、もう一度気を引き締めるようチームに働きかけているという。15分Qであるため、スターターだけでなく交代メンバーを含めた全員の万全な準備が必要だ。

また自身については、特別に足が速いわけでも、身長が高いわけでもない、と阿部。そんな中で自分の強みはオールマイティだという。何かに特化した練習をするのではなく、ブロック練習やルートを日々こなし、またコミュニケーションを重ねることで、QB奥野とのコンビネーションが完成されてきた。「去年の甲子園ボウルでは目標としていたTDが出来ず不完全燃焼だった。今年はTDを成功させたい」と気を吐いた。

RB #21 三宅昂輝(3年・関学高出身)

「自分がボールを持ったら必ずTDに繋げます」なんどもそう言い切った三宅。

今シーズンは試合での出場経験を重ね、結果を出したことで少しずつ自信がついてきたという。プレッシャーは感じないようにしているが、自分のランが出なかったら負けに繋がってしまうと考えることはあるそうだ。

早稲田のディフェンスは個々の能力が高く、しつこいタックルやボールへの執着心をビデオから感じ取り警戒しているという。

甲子園ボウルで勝つためには、ファーストドライブで流れを持ってくることが必要。「トップスピードに乗ればTDに持っていく自信がある、自分がボールを持ったら必ずという気持ちで取り組みたい」と意気込んだ。

QB#3 奥野耕世(3年・関学高出身)

去年の西日本代表校決定戦で立命館に喫した3つのインターセプト。その反省から、今シーズン奥野は”無理投げをしない”ことを常に意識してきたという。劣勢にあるときも焦らずに状況を考え、無理をしてでも投げるべきか、それともここは我慢して次のシリーズで立て直すかを見極められるようになった。「無理投げによるインターセプトもほぼなくなった」と、ここまでを振り返った。

また上級生になり、今まで以上にオフェンスを引っ張るという気持ちになれたという。春シーズンにはヘッドセットをつけてサイドラインから試合を見たことで、自身がプレーする時にもディフェンス全体を広い視野で見られるようになり、その経験が活きている。

「ファーストシリーズでTDを取って勢いをつけ、西日本代表校として恥じないプレーをしたい」と、話した。

DL #50 板敷勁至 (4年・池田高出身)

「ディフェンスがズルズルいくと負けてしまうから、必ず3つで止めてオフェンスに渡す、少しでも早くボールを取り返すことを大切にしている」と板敷。

リーグ戦終盤、そして西日本代表校決定戦で数多くのタックルやQBサックを決めることが出来たのを振り返り、自分の武器としてボールに対する嗅覚をあげた。

元々LBをしていた板敷は、目の前のOLだけでなく、その奥のQBやRBまでみてプレー出来ていると話す。常にボールの位置を意識して動き、プレーが崩れた時に自分がどう動けば止めることができるか、を考えているそうだ。中学までは空手や総合格闘技をしていた。そこで培ったぶつかることへの慣れと強さも武器となっている。

「当たり強さとボールへの執着心、そしてスタートの速さで、DLとしての1年間の成果を甲子園で発揮したい」と語った。

DL#52寺岡芳樹 (4年/主将・関学高出身)
「学生圧倒という目標を掲げて今シーズンやってきたが、まだそれを体現できた試合がない」と、ここまでを振り返った。甲子園ボウルがその最後のチャンスになる。

学生圧倒。それは甲子園ボウルで勝てば対戦することになる社会人チームを焦点に立てられた目標だ。ライスボウルで勝つためには、まず同じ土俵にいる学生を圧倒しなければいけない。甲子園ボウルに向けて作っているオフェンス、ディフェンスの”やりたいこと”を遂行できたら、学生圧倒が体現できたとみなせると話した。

リーグ最終節の立命館戦での敗北が、チームが大きく変わる転機となった。1年間やってきたことを否定された瞬間だったと吐露した。やっていることが間違えていたのではなく、気持ちの面で足りていなかったという。そこから3週間、敗者であるという気持ちを持ち取り組んだことで、12月1日は立命館に勝利し、ここまで来ることが出来た。

「当たり強さを活かし、LOSを破壊するような、攻めたディフェンスで学生圧倒を体現する」と、決意をあらわにした。

鳥内秀晃監督

「甲子園ボウルで勝って喜ぶ、その一瞬のために1年間の全てを注いでんねん。勝って学生が喜んだらそれでええんちゃうん」と、鳥内監督は話す。「主役は学生やからな」そう何度も繰り返した。

早稲田のQBはコントロールが良く、ラインも上手い、走れる人、取れる人も揃っているから、勝つのは簡単ではないと話す。また、レギュラーシーズンでは、まだ手の内を全て見せてきていないだろうから、当日初めて見るものもあるだろうと警戒を示した。

そんな中で勝つためには、やはりコミュニケーションが大切だという。1人では勝てないし、逆に誰か1人が目立たないところで失敗したらそれが負けに繋がる。常に最善策を考え、思っていることをその場でぶつけるよう指導してきた。

甲子園ボウルは一回勝負。ここで勝つためにやってきているが、あくまで大事なことは力を出しきることだ。力を出し切れば負けることはないと語る。

「多くのファンやOBから勝ちを期待されている分しんどいが、主役は学生」。

最後となる甲子園ボウルにも全く感傷に浸る様子を見せず、「甲子園ボウルで勝ってほっとできたらそれでええ。学生が喜んだらそれがええ」と、勝利の先だけを見つめていた。

学生アメフトの頂点に立つのは学生圧倒を掲げる関西学院大か、それとも悲願の全国制覇を狙う早稲田か。いよいよ3日後、令和元年の学生日本一が決まる。

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記事;高田妃菜(Pump Up学生アメフト)
写真;石本文子
編集;畠中隆好(甲子園ボウルPJT)