2020-11-30

【関西決勝】不変のライバル対決 光った関西学院の勝負強さ 5年連続の聖地へ

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、日常が一変した。スポーツの祭典、オリンピック・パラリンピックの東京大会までもが延期になった。

そんな激変の時代にあっても、関西学生アメリカンフットボールの頂上決戦は変わらない。近年、優勝争いを演じ続けてきた甲子園ボウル2連覇中の関西学院大学と5年ぶりの聖地を目指す立命館大学のライバル対決。今季は全日本大学選手権の西日本代表校決定戦がなくなり、関西学生リーグ1部所属の大学によるトーナメントで甲子園ボウル出場チームを決定する。

2015年以来の一発勝負。大熱戦必死の決勝戦は大阪府吹田市の万博記念競技場でキックオフを迎えた。

関学大のキックオフで試合開始。準決勝の神戸大戦でキックオフカバーチームに不安を残した関学大はキックを奥深くに蹴らず、手前に転がすキックを選択。それを立命大の主将、RB立川が捕球してリターン。ゴール前55ヤード付近から立命大の攻撃が始まった。

立命大の先発QBは3年生の野沢。最初のプレーこそ投げミスがあったが、RB立川のランプレーなどを効果的に使い、ゴール前10ヤード付近まで前進した。しかし、ここで関学大DB北川にインターセプトされ無得点に終わる。


対する関学大の先発QBはスターター3年目の奥野。最初のプレーこそ、WR河原林にパスを通すが、その後は立て続けにパス失敗。関学の最初の攻撃はパントで攻撃権を放棄。互いにファーストシリーズは得点に至らなかった。


試合はすぐに動く。第1Q、立命大がRB立川、RB平のランを軸に前進し、ゴール前4ヤードまで攻め込む。試合前、立命大の古橋監督は「ライン戦は厳しい」と話していたが、OL陣の奮闘が光ってランでリズムを生み出した。ゴール前でフォルススタートの反則があったが、最後はエースRB立川が飛び込んで、8ヤードのタッチダウン(TD)ラン。K東のキックも決まり、立命大が7点を先制した。

関学オフェンスはなかなかリズムがつかめない。ようやくチャンスを作ったのが、第2Q終盤。立命大のミスパントからチャンスをつかみ、RB前田へのパスでロングゲイン。最後はQB奥野からWR鈴木へパスを通してTD。前半は両者譲らず、7―7で折り返した。

 

後半は立命大のキックオフで試合再開。関学大の後半1プレー目。QB奥野が投げた短いパスは、立命大のDB永田にインターセプトされ、あっという間に攻撃権を失った。

ゴール前7ヤードという絶好の位置から始まった立命大の後半最初の攻撃シリーズ。このチャンスを逃すはずはなく、QB野沢がエースWR木村へきっちりパスを通してTD。再び立命大がリードを奪った。

 

反撃したい関学大はQB奥野のパスが立命大LB飯田にインターセプトされたり、ゴール前まで攻め込んで繰り出したスペシャルプレーを封じられたりと、なかなか流れを引き寄せることができない。K永田の2FGでジワジワと1点差まで追い上げるが、試合の主導権は握れないまま、第4Qに突入した。

 

残り時間11分。立命大はゴールまで87ヤード地点から攻撃シリーズが始まった。この場面、古橋監督は「ランでいこう、と決めた」という。甲子園を知らない選手ばかりの立命大。加えて、ここ数年は、常に関学大に阻まれてきた。そんな悔しさを最も感じてきたのが、1年生から試合に出場する主将のRB立川。「自分が主役。自分が決めてやるという思いしかなかった」と立川。立命大はここからボールを立川に託し、立て続けにランプレーを展開した。

敵陣に入り、気が付けばゴール前20ヤード付近。さらに、立川にボールを持たせて、ついにゴール前10ヤード付近まで。試合後に古橋監督が「立川の足がつっていた」と明かしたほど、立川は死力を尽くした。鋭いタックルを受け続けても、ボールを前に運び続けた。

そして、ゴール前4ヤードからの第3ダウン。これを得点につなげれば、5年ぶりの甲子園ボウルがグッと近づく大事なプレー。ここで、立命館はこのシリーズで13プレーも続けてきたランから、パスを選択。野沢はエース木村の短いアウトパターンにパス。しかし、これを読んでいたかのような鋭い反応で上がってきた関学大DB竹原にインターセプトされる。6分46秒を費やし、83ヤードも進んできたドライブが無得点で終わった。

一方の関学。「試合巧者」や「勝負強い」などと形容されることが多い学生王者の真骨頂を見せる場面がやってきた。そして、その中心には2回生から関学大のエースQBを背負ってきた奥野。甲子園ボウル出場をかけた、関学のラストドライブが始まった。

ゴール前68ヤード。残り1分36秒。点差は1点。フィールドゴールで逆転できるだけに、Kの能力を考えても、40ヤードほどボールを進める必要があった。奥野は冷静にターゲットを見極める。2度ほど第3ダウンに追い込まれても、奥野が「本来のルートとは違ってたけど、『ここに来てほしい』というところに鈴木が来てくれた」とWR鈴木へのホットラインでファーストダウンを更新する。フィールドゴール圏内に入ると、パスからランに切り替えて、時計を進める。そして、試合終了まで残り3秒のところで関学大がタイムアウト。

泣いても笑ってもラストプレーのFG。関学大K永田が蹴った21ヤードのFGはHポールの中央を抜けた。逆転サヨナラFG!今季から指揮を執る関学大の大村監督は「ま、距離も近かったので入るかなと思っていました」と素っ気ないが、関学大サイドライン、スタンドは劇的な勝利に沸き立った。

喜ぶ関学大と涙の立命大。

関学大の鶴留主将は「オフェンスはスタート、ディフェンスはパック、パシュート。そこにこだわってやろうと言ってきて、それができた」と胸を張り、立命大の立川主将は「関学はライバル。あいつらがいてくれたから、僕らも頑張れるところがある。最高の4年間を過ごさせてもらった」と語った。

最後の最後まで勝負の行方が分からない好ゲームを制したのは関学大。次は、学生日本一を目指して、5年連続54回目の甲子園ボウルに挑む。

記事:大西史恭(毎日放送)
写真:廣田光昭(関西学生アメリカンフットボール連盟)