2020-12-13

ゲーム速報〜関西学院大学3年連続31回目の優勝

13日(日)に開催された三菱電機杯第75回毎日甲子園ボウルは42-24で、関西学院大学が3連覇を達成して幕を閉じた。関西学院大学、日本大学の両チームともに記者会見時の表情とはかけ離れた、緊張した面持ちで試合を迎えた。

キックオフから試合は動く。日大のキック(K #11 福岡勇斗)をWR#7木下健太(関学大)がキャッチ、RB#21三宅昂輝(関学大)へスイッチすると、約73ヤードのリターン。日大ディフェンスに押し込まれるもタッチダウンを獲得した。

流れは関学大に傾くかと思われたが、日大にも明確な狙いが見えた。ランプレーを連発し、確実に前進するとQB#10林大希(日大)からTB#39秋元旻宰(日大)へスクリーンパス。秋元が14ヤードのランを見せ、その流れでタッチダウンを獲得。すぐさま同点とした。このプレーを契機に第1Qは日大ペースとなる。特に強さを見せたのはOL、DLの両ライン陣だ。守備で強固なDL陣が前進を許さなければ、攻撃ではOL陣が進路を切り開いた。日大はランプレーを主攻に、第1Q終了間際にパスプレーでタッチダウンを奪い14-7とリードした。

第2Qは関学大の攻勢で幕を開ける。日大の右サイドを攻め立てると最後はRB#21三宅が日大の左サイドを突破しタッチダウン、第2Q最初のドライブで同点とした。日大は変わらずランプレー主体に前進するも、得点には至らず。一方の関学大も攻めあぐねる展開が続いた。膠着したフィールドを切り裂いたのはQB#3奥野耕世(関学大)のパスだ。WR#4鈴木海斗(関学大)への25ヤードパスを皮切りに、連続で1stダウンを更新。WR#11大村隼也(関学大)がインモーションからボールを受け、タッチダウン。逆転に成功した。日大も終了間際にフィールドゴールにチャレンジするも失敗。第2Qの軍配は関学大に上がった。

第3Qは第2Qの勢いの残るままに関学大が押し込む。第3Q開始5分に敵陣ゴール前でインターセプトされるも日大オフェンスの攻撃を許さず抑え込み、攻撃権を奪還。この日2つめとなるRB#21三宅のタッチダウンに繋げた。「自分がボールを持ったら、タッチダウンにしたかった」と三宅。その後の日大の攻撃もシャットアウトし、良い形で第4Qへと繋げた。

可能な限り早く追いつきたい日大は、第4Q開始1分で攻撃権を奪う。RB#30川上理宇(日大)がスピードを見せつけた。自陣20ヤード付近でボールを受け敵陣40ヤード付近まで持ち込み、タックルをかわし独走。実に78ヤードを一人で走り抜きタッチダウンを獲得した。対する関学大の攻撃は止められないものとなっていた。第4Q開始5分にQB#3奥野からWR#1糸川へ24ヤードのパスでタッチダウン。その後日大もK#11福岡のフィールドゴールで3点を返すも、関学大RB#21三宅が第4Q残り5分に53ヤードを独走し42-24と突き放した。ここで日大の反撃も終了。日大は3年ぶりの悲願達成とはならなかった。

甲子園ボウルMVPを関学大RB#21三宅昂輝、敢闘賞を日大RB#30川上理宇が受賞した。チャックミルズ杯は関学大QB#3奥野耕世が2年ぶり2度目の受賞となった。その奥野は、「自分が最上級生である今年も、ここまで勝ち進み、日本一になることが出来て嬉しい」と笑顔をみせる。WR#4 鈴木海斗とのホットラインが目立ったことについて聞かれると、「3rd down longのシチュエーションでは、パスを通さなければフレッシュを獲得出来ないと考えた時、一番頼りにしている(鈴木)海斗へのパスが結果的に多くなった」と振り返った。

小学一年生の頃からアメフトを続けてきた奥野は、集大成として日本一そしてミルズ杯を掴み、これまでずっと不自由なくアメフトに没頭することができる環境を作ってくれた両親へ一番感謝を伝えたいという。

そして、甲子園ボウルで日本大学と戦い、元気に活躍する姿を見せられたことで、辛かった時に自分を支えてくれた人たちに少しでも恩返しが出来ていれば嬉しいと話した。

今大会は、チャックミルズ杯を受賞した経験のあるQB同士の対決となった大会でもあった。今回2度目の受賞となった関学大QB#3奥野と2017年度受賞の日大QB#10林だ。試合を終えた林は、悔しさを滲ませながらも「4年間、PHOENIXのエースとしてやって来られたことを誇りに思うと共に、周りに感謝している。今は自分を褒めたい」と泣き顔を綻ばせた。

林は、試合終了まで口を閉ざしていた怪我の状態について、右肩の靭帯が完全断裂していたことを明かした。関東での決勝戦から2週間、一切練習は出来ず、様々な医療機関やトレーナーから治療を受けたという。今日は痛み止めを施し、満足のいく状態ではなかったが、勝つつもりで勝てると思ってやって来た。

昨日、橋詰監督から「エースはお前や」と託された日大伝統の背番号 10を付けての出場となった林は、「まともに投げられない自分を守ってくれたOL、懸命に受けてくれたWR、必死に走ってくれたRBに本当に感謝している」と語った。

そして最後に、「3年前に素晴らしいと感じたこの甲子園の舞台。3年間様々なものを乗り越えてやってきた今日の甲子園は、負けてしまったものの3年前以上に素晴らしいものだった」と清々しい顔をみせた。

そんな林について日大の橋詰功監督は、「結果が変わったかどうかはわからないが、ベストな状態でさせてあげたかった」と漏らした。選手起用に関しても「スターティングメンバーとして起用する上では肩を気遣ってチームが上手くいかなくなってしまうことは無いようにと予め取り決め、出来る全てをぶつけたコールを出した」と全力は尽くした様子。「オフェンス・ディフェンス共に完敗だった」と振り返った。

対して鳥内前監督から3連覇のバトンを昨年引き継いだ関学大、大村監督は「日本大学は事前に予想していた通りオフェンスには勢いがあり、両ラインが強かった」と振り返った。「第1Qでは、想定と少し異なる日本大学の攻め方にディフェンスは押されかけたが、第2Q途中からは対応することが出来た。オフェンスは、RB#21三宅や、WR#4鈴木が要所で決めてくれた」と話した。

チームの地力を発揮できるかが重要だと考えていたが、しっかりと勝利することが出来てほっとしていると、無事に日本一を掴み安堵した様子だった。

ライスボウルに関しては、社会人とはあまりに力の差があるとし、「鳥内さん(前監督)と相談します」と言い残し、笑いを誘った。

記事:沼田眞希 、高田 妃菜
写真:KCAFL