2021-1-1

ライスボウル展望〜3年連続14回目の出場 関西学院大学ファイターズ

さあ、今年もこの時がやってきた。アメリカンフットボール日本選手権プルデンシャル生命杯「ライスボウル」。社会人王者への挑戦権を得たのは、3年連続14回目の出場になる関西学院大学ファイターズ。社会人優位は変わらず、関学大は厳しい戦いが予想される。学生は11連敗中で、大会の存在意義すら問われているような現状。その状況を打破できるのか。関学大に勝機はあるのか。注目の頂上決戦がキックオフを迎える。

関学大は関西学生リーグのトーナメント決勝で立命館大学パンサーズにサヨナラフィールドゴール(FG)で辛勝。なんとか甲子園ボウルまでの階段を上がってきた。

今年の甲子園ボウルは新型コロナウイルスの影響で、全日本大学選手権ではなく東西大学王者決定戦となった。関学大は日本大学フェニックスを42―24で下し、31度目の優勝を果たした。

試合開始のキックオフ。この日、MVPに選ばれたRB三宅(4年)が75ヤードのビッグリターンで敵陣に攻め込むと、年間最優秀選手(チャックミルズ杯)に輝いたQB奥野(4年)がWR梅津(2年)に11ヤードのタッチダウン(TD)パスを通して、あっさりと先制。その後、日大に反撃を許す場面もあったが、前半を21-14とリードして折り返した。

後半も関学大ペース。RB三宅のラン、QB奥野からWR糸川(2年)へのパスなどでTDを積み上げて、結局、計6TDの快勝。甲子園ボウル3連覇を飾った。

甲子園ボウル直後のヒーローインタビュー。関学大の大村監督はライスボウルについて問われると、「鳥内さん(関学大前監督)と相談します」と言い、場内の笑いを誘った。「どれくらい差があるか分からない」と大村監督が話すほどライスボウルでは劣勢を認めている。

近年、関学大は「社会人に勝って日本一」という目標を掲げるが、外国人選手などを擁する社会人に勝つということが「現実的ではない」という声がチーム内から聞こえてくることもあった。今季の4年生も、甲子園ボウル後に集まって、キャプテンのRB鶴留を中心にライスボウルに向けて話し合ったという。そこで、「勝ちにいく」という意志を確認しあったそうだ。RB鶴留は「チームの全員が本当に勝つという気持ちを持てるかどうか」と話す。200人規模の集団である関学大が、本当に勝つ気になれているかどうか。主力で試合に出続けている選手だけでなく、試合に全く出ない選手、スタッフもいるのがチーム。そんな様々な立場の人間が「打倒オービック」で団結できるのかどうか。運も味方につける必要のある一戦では、その団結力が鍵を握るだろう。口だけではない本気のチームワークを見てみたい。まず、その大前提がなければ、勝利を手繰り寄せることは難しいだろう。

ただ、関学大には「経験値」がある。対するオービックは7年ぶりのライスボウルになる。QB奥野は3年連続のスターター。RB三宅は昨年の大会で富士通の鉄壁ディフェンスをぶち破る、独走TDを挙げている。大村監督も「勝負できる選手はいる」と話していて、社会人を過大評価せずにプレーできる点は好材料だ。

実力差のあるオービックオフェンスを関学大ディフェンスがシャットアウトするのは極めて厳しい。粘って、耐えて、一発TDを許さないように守り、要所のビッグプレーでTDをFGに、FGをパントにとジワジワと追い込んでいくしかないだろう。

勝負の分かれ目は関学大の中のランプレーが出るかどうか。大村監督も「オフェンスラインがかなりきつい」というように、オービックの第1線DLは日本最強メンバーがズラリ。ライン戦で負けることはある程度認めたゲームプランを練る必要があるだろう。関学の得意技「スペシャルプレー」もあるだろうが、オービックもそれは周知の事実。そこで、タイミングの早い短いパス、ラインの力関係に左右されにくいオープンプレーを中心に組み立てていくとみられるが、QB奥野が話すように、「それだけでは戦えない」。となると、どうしても中のランプレーを出さないと手詰まりになり、ワンサイドゲームになってしまう。プレーコールで散らしつつ、RB三宅、前田、鶴留らの中のランプレーを出してリズムを作りたい。

そして、今大会は12分クオーター(Q)で行われることが決まった。例年は15分Qなので、各Qで3分短縮された。すなわち、今までの1Q分(12分)も短くなったことになる。これは「メリットしかない」と大村監督。自力に差がある以上、試合が長ければ確実にその差が出てくる。序盤にリードを奪える展開になれば、そのままロースコアで逃げ切るという形も見えてくるだろう。そんな展開に持ち込むためにも、前半が大切だ。

「やるからには勝ちにいく」という関学大の4年生。その意地をプレーで見せてもらいたい。一つのブロック、一つのタックル、キャッチ、パス、ランのセカンドエフォート。突き詰めてきたファンダメンタルを最高の舞台で披露してほしい。その先に2002年以来の「ライスボウル制覇」があると信じて。決戦は今年も1月3日、東京ドームだ。

記事:大西史恭(毎日放送)
写真:関西学院大学ファイターズ