今年も最強戦士たちがこの地に帰ってきた。

関西学院ファイターズは5年連続54度目の甲子園ボウル出場を決め、関西王者として絶対に負けられない戦いに挑む。

「学生日本一」。ただそれだけを目指して走り抜けるはずだった。世界中が未曽有の危機に襲われた2020年。ファイターズも例外ではなかった。鶴留主将は「例年と全然違う」。こんなにフィールドに立たない日があっただろうか。何時間もかけて行うミーティングの場所は、会議室からオンラインに。「今まで通り」が全く通用しない異例の1年が幕を開けた。

伝統を守ることも難しかった。毎年決戦前にはホテルに前泊し、不安なことやそれぞれの思いをすべて吐き出す。その後、移動のバスの中で校歌を歌う。準備を全員で整えて、臨んでいた。今年も密を避けながらの打開策を探った。そんな中挙がった一つの案はバスを2台に分けること。しかし、全員が揃わなくては意味がない。大村監督は「真似せんと考えたらええ」。やるべきことは何か。一つ一つの行動の意味を自分たちで確かめた。「覚悟の示し方の一つ。それが全てではない」と鶴留。毎年見られた4年生の坊主姿が今年見られないのも、その所以だ。

「チームとしては未完成」と鶴留は厳しい表情を崩さない。RB三宅の独走やQB奥野の個人技での得点が目立った今季。トーナメント初戦では前半に41点と大量得点を挙げ、無失点に抑えた。だが、メンバーを入れ替えて挑んだ後半で失速。2本のTDを許した。第2戦でも前半に挙げた得点で勝利したが、後半は無得点に終わるなど、選手層の差は歴然だった。

今年はスローガンを「BLUEGRIT」と掲げ、「自分がやる」という自主性を重んじてきた。だが今季の試合を振り返り、ファンダメンタルとプレーの精度、ファイターズの強みである部分が欠けていた。「ファンダメンタルはどれだけ自分と向き合えるか」。鶴留が言い続けた「自分がやる」という思いは、チームにまだまだ浸透していないことを痛感。「主将としてどこまでやり切れるかが、甲子園で勝つための一つの要因になる」。どれだけ学生王者に見合ったチームをつくれるか。2週間を経て、チームの変化にも注目したい。

「FIGHTON」を歌ったその瞬間に不安は取り払う。優勝が懸かった試合のみで歌う部歌。歌ったら全員が覚悟を決めるというのはファイターズの約束事だ。「歌ってからは何も考えずプレーに集中する」。今の自分を、隣の仲間を信じてできることをやるだけ。聖地甲子園で「FIGHTON」を歌い上げ、「学生日本一」へと走り出す。

記事:河合里奈(関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツ)
写真;関西学院大学体育会学生本部編集部・関学スポーツhttps://kgsports.net