DB#10田中 雄大(3年)
チーム内外からビックプレーメーカーの呼び声高い田中。今年3年時であるが、堂に入ったプレーぶりを見せている。彼の特徴は思い切りの良さ。決してギャンブルではない鋭い読みでのインターセプト、好タックルを生み出す。予想を超えるスピードでボールに反応し、相手校の勝負手を沈める。田中の一発タックルで攻撃陣の士気を削ぎ、モメンタムを引き寄せられるのが強みだ。
今年は春のシーズンから随時試合に出場。下級生らの成長もめまぐるしい中、それ以上に存在感を示したのが田中であった。オープンへのラン、パスに対して、一撃で仕留める姿が印象的である。ランプレーへの反応では、フロント陣が止めきれなかったプレーでも、ロングゲインを許すことなく的確にタックルを入れている。最終防衛ラインとして、相手の地上戦を阻む。タックルも破壊力があるため、ソロタックルあるいはファンブルフォースも、彼の見せ場となってくる。
また競り合いにも強く、177cm、72kgのシャープな体格と相まって、俊敏で芯の強いディフェンスを見せる。日大のパッシングオフェンスに対しても、十分対抗できるだろう。大型でスピードもある日大WR陣との戦いにも目が離せない。
また今季は、立命大戦でビッグリターンを決めている。試合開始早々の場面で一気に敵陣へボールを運び、先制点に貢献した。彼の持ち前の闘志は、ディフェンスだけでなくスペシャルチームでも大いにプラスとなる。
今季の赤と青の一戦は、先取点が重要と予想され、そのためにはキックオフリターンでまずモメンタムを引き寄せたいところ。当然警戒されるポジションだが、リターナーとしても試合を決める活躍を期待する。
ここ一番で欲しいプレーを出すのが田中雄大である。今年の甲子園ボウルは、接戦が予想されるため、彼の一撃で関学の流れに持っていきたい。

DL#52松本 栄一郎(2年)
 ここ数年、関学のDLは、梶原(現パナソニック)、池永(現アシスタントコーチ)ら、180センチを超す大型選手を中心に組まれてきた。しかし今季は中心選手が抜け、ディフェンス力の低下も危惧されたが、岡部、安田、そしてこの松本という175センチ前後の3人がディフェンスの第1線で奮闘してきた。
 松本は関学中時代に勧誘されてタッチフットボールを始めた。当時から体が大きかったため、DLの真ん中でプレー。高等部時代は3年のときに全国選手権大会のクリスマスボウルに出場し、早大学院に敗れたもののしっかり結果を残し大学に進学した。
 大学では層が厚かったにも関わらず試合に出場する機会を得た。試合経験を積む中でスピードの必要性も感じ、サイズアップするよりも体を引き締めた。昨年の甲子園ボウルにも出場し、多くの経験を得ることができたという。
松本の魅力は1対1の当たりに強いことだ。大型OLをそろえる立命大を相手にしても当たり負けることはなかった。それどころか、OL2人のブロックをかき分けてQBにプレッシャーをかけるなど、その怪力ぶりを知らしめた。ランプレーでも、相手OLが松本のブロックに手こずるため、LBがフリーで動くことができるなど、数字に表れない活躍を見せる。また喜怒哀楽をあまり表情に見せず、終始マイペースで相手の攻撃意欲を削いでしまう。
松本の成長は、毎日の練習で池永アシスタントコーチがきっちりと指導できていることも大きい。同じ2年の安田とともに、多くのことを吸収できているのだろう。
鳥内監督は、ディフェンスでキーとなる選手の一人に「真ん中の選手」の一人として松本の名を挙げた。試合で経験を積むごとに、フットボールへの理解を深めている松本。LBの小野とともに真ん中は通さないディフェンスをしっかり展開してくれそうだ。

LB#57小野 耕平(4年・副将)
LBとして1年時からスターターを張る小野。プレーへの素早い反応と的確なタックルで相手校を仕留める。ボールへのパシュートは抜群で、強豪との一戦でもソロタックルを連発し、攻撃陣を沈黙させる。キャリアーに襲い掛かり、ロスヤードにも仕留めている場面も多くみられた。
今季はシーズンを通じて、中央付近のランやショートパスへのプレッシャーが強力で、相手校の攻撃を阻んできた。甲子園でも、日大の軸となるプレーを封じることで、ドライブを最小限に留めたいところ。ダイブプレーやオフタックルなどの守りには小野が欠かせない存在になっており、能力の高いLB陣の中でも特に日大は脅威と感じているだろう。
またパスへの読みも鋭く、京都大や立命大戦でインターセプトを記録。パスシチュエーションでの中央ミドルパスに対しては、ほぼ小野がカバーしており、日大はかなりコースが制限される。
精神面でもチームの主柱として大役をこなしている。立命大との一戦を前に、最も危機感を持って練習に励み、守備陣を鼓舞し続けたのが小野である。鳥内監督も「彼がいたからこそ安定した守備が展開できた」と話すように、立命大攻撃を十分に分析し、その強さを感じたうえで、どうすれば封じ込められるかに全力を注いだ。
結果として、関学大守備は今季見たことがないぐらい強力に機能した。それまで各人のプレーリードで防ぐ守備から、積極的なブリッツを多用し、要所で相手の攻撃を抑え込んだのである。これにより、立命大のゲームプランは崩れ、関学大は立命大攻撃陣からTDを奪われることなく勝利した。この試合で、小野自身も大いに暴れまわり、その存在感を改めて思い知らされることとなった。
フィールドを縦横無尽に駆け回り、関学大の鉄壁を担う小野の活躍がどこまで見られるか。勝利へのキーマンとして是非注目してほしい。

QB#11斎藤 圭(4年)
 昨年からスターターを務める斎藤。リーグ戦では113回パスを投げて67回成功、パス成功率は59.3パーセント、854ヤードを稼ぎだし、関西学生リーグの優秀攻撃選手に2年連続して選ばれた。甲子園ボウルでもそのパス能力の高さを見せつけたいところだ。
 しかし、リーグ最終節の立命大戦では、25回パスを投げて13回の成功ながら獲得できたのはわずか81ヤード。さらにインターセプトを3度されてしまうなど、立命大の強力なディフェンスが相手とはいえ、若干不安な面も残る。
 最終学年を迎えた斎藤が一番変わったところは、プレーをよく考えるようになり、責任感を持ってオフェンスを引っ張るようになってきたこと。昨年はあと1ヤード進めばダウン更新という場面でも、手前でサイドラインを割ってしまうようなプレーが見受けられた。しかし今季は冷静に判断できており、もともと能力の高かったパスもきっちり決めることができている。
 ただ、やはり関学大で2年目のスターターを務め、ライスボウルでの勝利が最終目標であるならさらに上を目指したい。斎藤に求められるのは、パッケージされたパスはもちろん、そのパッケージが崩れてしまったときのWRとの呼吸だ。相手ディフェンスからプレッシャーを受け、QBがスクランブルしたとき、どこのWRがフリーでパスターゲットに成り得るかを瞬時に判断することが、甲子園、そしてその先のライスボウルで出来たなら一流のQBの仲間入りとなる。
 甲子園ボウル前の記者会見で鳥内監督は、キーになるオフェンスの選手について「甲子園では個人技が必要となる」とし、鷺野とともに、斎藤の名前を挙げた。きれいなパスも個人技だが、QB自らが走って相手ディフェンスをブレイクする個人技を求めているのに他ならない。
 無駄なインターセプトを食らわず、1ヤードでも前に出るという積極性を見せることで、日大ディフェンスをブレイクする新しい斎藤に出会える試合になってほしい。

RB#28鷺野 聡(4年・主将
 今季、44回のキャリーで380ヤードを獲得。1回のランで平均8.6ヤードを稼ぎ、TDも7本奪うなど、前評判通りにしっかり結果を残した鷺野。ラッシング部門で1位に輝き、松葉杯(関西学生リーグ最優秀選手)にも選ばれた。
大学入学当時、主将を務めていたのが同じRBの松岡正樹。RBというフィールドに常にいないポジションながら、近年でも特に評価の高い主将の下で1年間背中を見続けた。2年時はU19世界選手権の日本代表チームに選出され主将も務めた。3年ではエースRBとしてリーグ戦で平均8.3ヤードを走り、ランプレーの要として、オフェンスになくてはならない存在になった。そして4年を迎え、常に意識してきた松岡と同じように主将の道を選んだ。
鷺野は1年から試合に出て、ビッグランを見せることも多く、印象に残る走りを見せてきたように思えるが、ビッグゲームの勝負所での起用は見送られることが多かった。その理由は、1発のタックルやファンブルで落ち込んでしまい、その後のプレーに支障が出てしまうほど、気分にムラがある選手だったからだ。
その不安を解消すべく、トレーニングに打ち込み当たりに強くなった。これまでは体重が軽く、DLに引っかけられただけで倒れてしまうこともあったが、タックルをされても前に倒れて、最低3ヤードは稼ぐ走りを見せるようになった。また弱いとされていた精神面も、主将としてチームを鼓舞することで、一皮むけたと評価されるほどになった。
「しっかりゲイン(前進)してTDを取る。ビッグゲームで点を取るのがスターターで4年の責任。パスプレーのときでも泥臭くプレーしたい」と話す。「ビッグゲームで点を取る」というコメントの中に、この4年間の集大成として、全信頼をコーチから寄せられてプレーをするのだという意気込みを感じることができる。
QB斎藤がパスを展開するためにも欠かせないのがランでの前進。勝負所でのビッグランで、鷺野の4年間のすべてを見せつけたい。

WR#88木戸崇斗(4年)

 チームの誰もが認めるトップアスリート。2年前のエースRB望月(現オービック)が次々とディフェンスをなぎ倒して走る体幹の強さを見せたが、関係者によるとそれ以上の強さを持ち合わせる。WRの正確なブロックはゲインをさらに積み上げる要素の一つだけに、木戸の存在は大きい。チーム随一の俊足、キャッチ、コース取りなど、どれをとってもオフェンスナンバーワンの素質を持ち合わせる。
 しかし、今季はコンディション調整が上手くいかず満足できる結果が残せていない。秋季リーグには3試合の出場で、パスキャッチもわずか4回、61ヤードの獲得にとどまっている。「ビッグプレーで自分が流れを作りたい」と、体調を整えて挑んだはずの大一番・立命大戦で、TDを狙ったロングパスにあと一歩届かずキャッチ出来なかった。またパントキャッチでもミスを犯すなど、木戸らしからぬプレーぶり。ロングパスをいつものようにキャッチできておれば、粘る立命大を突き放す展開にもなっていただけに、もったいないプレーとなった。
 実は木戸は、立命大戦では2年、3年のときもあまり良いプレーを見せることができていない。しかし、期待が持てるのが甲子園ボウルでの成績。2年、3年と続けて2TDずつ奪う活躍を見せており、今年は満足な結果を残せていない木戸にとって、存在感を示す絶好のチャンスなのだ。またチームはキッキングチームの練習にも時間を費やし、大きくリターンすることも多いだけに、パントリターナーとしてもビッグリターンを見せたいところだ。
 「この秋はあまり出ていないこともあったので、コミュニケーションを取りながら頑張っている」という木戸。卒業後もフットボールを続けるというトップアスリートが挑む学生との最後の戦い。大舞台の最も似合う男がこれまでのうっ憤を晴らし大暴れすることができれば、関学の圧勝も間違いないだろう。

記事;江田政亮(スポーツライター)、上田哲也(rtv)
写真;P-TALK
http://www.p-gallery.jp/stm_shimizu.html
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)
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