3年連続52回目の出場となる毎日甲子園ボウル。昨年は「油断した」(鳥内監督)結果、日大に17-23で敗れ、関西勢11連覇中だった記録まで止めてしまった。何としても勝利を収め、29回目の学生王者に輝くことが関学に与えられた使命だった。

ゲームデイ本番が近づくと、「早稲田のパスオフェンスが関学を苦しめる」という評価がメディアを中心に報道され、試合直前も関学スタンドでは選手の保護者から「不安でいっぱい。絶対勝つと信じたいけど、大丈夫か」とのコメントが聞かれた。昨年のことがあるだけに、西日本を勝ち抜いたから絶対に勝てる、という慢心はどこにも見当たらない。

重苦しい雰囲気の中、試合は開始する。関学は最初の攻撃をテンポよく進め、RB#6渡邊(3年)のブロックを活かしたビッグランもあり、先制のTDを奪う。

直後のディフェンス。コーディネイターの香山コーチは「今シーズンは試合の入り方が悪い。この試合こそ、ファーストシリーズをしっかり止めよう、と話していた」と、試合後に振り返っていたが、69ヤードをドライブされTDを奪われてしまう。

しかしこのシリーズでは、DL#90三笠(4年)が、早稲田最強のOL#52五味(3年)は、押し込みに弱いと分析した通りにプレーし、8ヤードをロスさせるQBサックを見せた。

「早稲田はパスオフェンスで攻めてくる」とディフェンスを準備してきた関学は、早稲田の2度目のオフェンスでDB#45畑中(3年)が飛び込んでパスをインターセプトする。また3度目のオフェンスでは、DB#36荒川もパスを絶妙のタイミングでカットするなど、要所で相手のオフェンスを封じ込め、モメンタムを相手に渡さない。

さらにこちらも分析で弱点が見えていた相手パント体型では、2度目のパントでボールをブロックするために配置されたDL#50板敷(3年)が勢いよくラッシュすると、上から手を出してボールをブロックすることに成功。そして転がるボールをLB#44海崎(2年)がゴール前1ヤードまで持ち込み、2本目のTDにつなげた。

板敷は「最初のパントラッシュは相手のブロックにはじかれたので、2本目はラインの低いブロックに対応し、上から手を出した。(FGが2本続いていたので)ワンチャンをTDにつなげられてよかった」と、ビッグプレーを振り返った。

関学オフェンスは、2回目の攻撃以外を全てをTDかFGにつなげて得点を重ね、2Q終盤までに27-7とリードを広げた。

この点差のままで前半を終えたい関学に、またもやビッグプレーが生まれる。

早稲田が関学陣内36ヤードまで攻め入ると、4thダウンギャンブルで、QB#1柴崎の投じたパスをDL三笠がカット。落ちてきたボールがそのまま手元に残りインターセプトとなる。

パスターゲットのWRがフリーで走っていただけに、カットできなければ、ロングゲインか、TDを許すシチュエーションでの大きなプレーとなった。

三笠は「OL2人がローブロックしてきたが上手く対処でき、ハンズアップ(手を上げて)してパスがカットできた。インターセプトは偶然。相手QBのリリースポイントが低いので、練習からハンズアップを意識してきた。自分が下級生のときに4回生がビッグプレーをするとムードが変わったので、自分自身が4回生として活躍し、チームの雰囲気をよくしたかった」と、満面の笑みで話した。

結局試合は、37‐20で関学が快勝。香山コーチが「相手はパスでくると想定し、さらにランを止めたことで、パス守備だけに集中することができた」と話す。

早稲田オフェンスは、ランプレーの獲得が僅か74ヤード止まり。手詰まりとなってパスでオフェンスを展開した。しかもDL三笠が「DBは、けが人がいて下級生中心のメンバーで弱い部分があったので、パスカバーではなく、パスラッシュでプレッシャーをかけるという作戦だった。相手QBもそのプレッシャーを意識して投げるタイプだったので成功した」と、意図的にパス中心の攻撃に持ち込ませて、攻撃を封じ込めたことを明かした。

得点の部分では、前半にFGを2本決めたことが大きい。同点にされた直後、ゴール前1ヤードまで迫りながら手詰まりとなり、それでも奪った3点。そして続いてのオフェンスでの28ヤードFG。鳥内監督は「ほんまはTDをとらなあかん」とコメントしたが、K#8安藤の安定ぶりは、ライスボウルでも頼りにしたい。

安藤は「いつも通り。甲子園は雰囲気が違うが、フィールドに入ったらいつも通りに蹴るだけ。ライスボウルでもオフェンスやディフェンスが手詰まりになったとき、キックできっちり点を取りたい」と話した。

最後にライスボウルをいかに迎えるかだが、この試合でWRが犯してしまったフォルススタートの反則2度に注目したい。たかが5ヤードの反則かもしれないが、Xリーグ覇者に対しては、されど5ヤードの喪失になる。格上の相手に対し、いかにミスを犯さず戦い抜けるか。2002年にアサヒ飲料に勝利して以来、2度目のライスボウル優勝を目指して、残り2週間はミスをなくすために過ごしていきたい。

 

記事;江田政亮(スポーツライター)

写真;P-TALK

http://www.p-gallery.jp/stm_shimizu.html

編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)