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2007.12.17

<甲子園ボウル ゲームリポート>
21世紀最初の青と赤

 試合は日大のレシーブでスタート。日大のQBはクラッシュボウルで負傷した木村に代わり、平本が登場。木村から「思い切ってプレーしろ」と檄を受けてプレーした平本は、ショットガン&ピストル隊形からエースRB金のランプレーを軸に、TE吉田へのショートパスで前進を図るが、関学守備陣の積極的なブリッツにより思うような前進ができない。
 また関学もQB三原のパスプレーを中心に攻撃を展開するが、「予定したオフェンスプランが全然通用しなかった」(関学・鳥内監督)。3DLと4DLを併用し、複雑なパスラッシュをかける日大守備に前にパスのタイミングをずらされ、得点には至らずパントに追い込まれる。

日大#21 RB金 抜群のスピードで関学守備陣を振り切り最初のTDを奪う(写真/土田麻子)

 この拮抗した状態から先に一歩踏み出したのは日大。関学P大西の好パントで自陣深くまで追いやられてのシリーズ。
 QB平本が関学のLBブリッツによって空いたスペースへパスを投げ込み、RB金がボールをキャッチ。金は抜群のスピードでフィールドを駆け抜け、関学守備陣を振り切りエンドゾーンへ。1Q11分21秒に日大が先制TDを奪った(日大7−0)。
 日大に先制を許した関学だが、直後のシリーズで即座に反撃を試みる。QB三原がWR柴田、榊原、RB河原へパスを決め、リズムよくフレッシュを続ける。そして2Qに入った直後、エンドゾーン目前からRB横山がゴールラインへ飛び込み同点となるTDランを決めた(関学7−7)。

 さらに関学の反撃は続く。迎えた日大の攻撃シリーズで、3rdダウンの場面から、先制した時と同じパターンで関学守備ブリッツの穴をねらってパスを投じたQB平本。しかしこのプレーを読んだ関学DB徳井がそのボールをインターセプト。ターンオーバーで再び攻撃権を奪う。
 勝ち越しを狙ってドライブする関学攻撃陣。日大強力DLをカウンターやドロープレーでかわそうとするものの、逆に日大DL小宮、LB中谷らの好ラッシュの前にロスタックルを強いられてしまう。なかなか思うようなドライブのできない関学攻撃陣。
 「結果的にパントの差が大きかった」(日大・内田監督)。関学P大西が連続して好パントを見せ、着実にフィールドポジションをコントロールする。

 2Q中盤。関学はDB深川のインターセプトで日大から攻撃権を奪い取ると、三原から松原のパス、RB稲毛のランプレーで前進し、最後はK大西が敵陣30ヤード地点からFGを決め、この試合で初めて日大から勝ち越し点を奪う(関学10−7)。
 ここまで関学守備陣の複雑なプレーの前に沈黙を続けていた日大攻撃陣。だが2Q終盤から徐々にリズムを取り戻し始める。RB金が個人技で少しずつ関学の壁を削り、前進を続けると、QB平本もインターセプトのショックを見せず、冷静にターゲットへパスをヒットさせていく。さらに関学の反則も絡み、関学陣内までボールを運んだ。このシリーズではTDにこそ至らぬものの、TE/K中村(琢)が、40ヤード地点から豪快なキックでFGを成功させ、前半戦をドローで折り返した(日大10−10)。

 後半に入り最初に主導権を握ったのは関学。後半の第2シリーズでQBに三原と浅海を併用。リーグ戦ではあまり見せなかったQB浅海のキーププレーで日大守備を混乱させると、RB平田らのベーシックなランプレーも効果を見せはじめる。
 最後はK大西の23ヤードFGでこのシリーズを締め、日大から再び勝ち越しを奪う(関学13−10)。
 しかしハーフタイムで修正を終えたのは関学だけではない。
 「前半で平本は落ち着いてプレーできるようになったので、後半からディープゾーンへのパスプレーをコールした」(日大須永コーチ)。関学に勝ち越しを許した直後のシリーズでは、QB平本からフィールドを縦に走るWR小嶋と松林へのパスが連続してヒット。あっというゴールライン目前まで前進を果たし、最後はQB平本のキーププレーで日大は逆転のTDランを決めた(日大17−13)。

 3Q終盤を過ぎたあたりから、両チームディフェンス陣の足が止まりはじめる。
 日大TDドライブ直後の関学オフェンスでは、前半に関学が手を焼いていた日大DBの鋭い出足が弱まり、関学のWRがフリーになる機会が増えてきた。このチャンスを活かしたい関学はQB三原に積極的にパスプレーをコールする。
 期待に応える三原はWR秋山、岸へ着実にパスをヒットさせ、攻撃のリズムをつかみ始める。そして3Q終了間際には三原から榊原へのホットラインが繋がり、日大から勝ち越しのTDパスを成功させた(関学20−17)。

終始冷静な判断とプレーでチームを勝利に導き、個人賞3賞を獲得した関学QB#9三原(写真/UNN関西学生報道連盟 濱田直毅)

 試合は衝撃の第4Qに突入する。
 「個人的には、なにかを乗り越えたような出来だった」(QB三原)。3Q中盤から目覚めた関学攻撃の勢いは止まらない。三原から榊原のプレーアクションパスであっさりとダウンを更新すると、この試合でキープレーとなったQB三原のキーププレーで着実に前進を果たし、レッドゾーンまで攻め込む。
 最後は、4Q4分54秒に追加点となるRB横山のTDランへと結びつけた(関学27−17)。

 もうこれ以上のリードは許されない日大だが、「点差が開いても関係ない。点差ではなく自分たちのフットボールができるかどうかが大事」(日大・主将鈴木)。日大選手に焦りの色は見られない。
 その「自分たちのフットボール」が発揮されたのが関学TD後のキックオフ。自陣4ヤード地点でボールを受けたRB金はチームメイトの開いた走路を一瞬ですり抜け、エンドゾーンまで一気に走りきった(日大24−27)。
 さらに次のシリーズでもQB平本のパスをフィールドを縦に走るWR秋山が受け取ると、追いすがる関学守備陣を振り払い、まさに一瞬で2本のTDを奪い、日大がついに逆転に成功する(日大31−27)。

 関学の執念も負けてはいない。三原から秋山の39ヤードパスで日大陣内に侵入、RB平田のランプレーでさらに前進。ここでQB三原はWR岸へとボールを投じる。ボールをキャッチしたWR岸は日大守備の猛追を受けるが、最後は日大の選手を引きずりながら、エンドゾーンへ倒れこんだ(関学34−31)。
 逆転された日大だが、4Q10分45秒にフィールド中央付近、ショットガン&ピストル隊形から、RB金へのオプションフェイクを入れた秋山へのリバースプレーを敢行。この試合で初めてと言っていいスペシャルプレー。この采配がズバリ的中し、がら空きになったフィールド右をWR秋山が一気に駆け抜けて再逆転、日大の赤いスタンドが大きくうねる(日大38−34)。

 試合終了まで4分15秒自陣35ヤード。関学は勝利の望みをエースQB三原に託す。
 三原は残り時間を冷静に読み取り、的確なクオーターバッキングでチームを指揮する。4thダウンまで追い込まれる場面もあったが、冷静なプレーでじっくりと時間を使いながらプレーを遂行していく。

 試合残り時間53秒。関学はゴール前1ヤードで1stダウン。しかし日大ディフェンスも執念を見せ、TDを狙う三原のQBスニークを3回連続で阻止する。

RB横山が決勝TDダイブを決め満員の関学スタンドに向かい雄叫ぶ関学主将OL#55岡田(写真/土田麻子)

 残り時間はわずか6秒。4thダウン&インチ。最後のタイムアウトがとけ、バックスタンドから鳴り響く2万人の「レッツゴーKG」を背に受けフィールドへ赴く関学。内田監督の「頼む」という願いを胸に刻み込み、赤い城壁を築く日大。
 「僕が決めました。やっぱ最後のプレーはあいつしかいない。4年間ケガで苦労してきたあいつが、今季はRB陣のリーダーとなって皆をここまで引っ張ってきてくれたから」(関学・主将岡田)。
 関学が選択した最後プレーは、RB横山のダイブ。日本一へはばたく空の翼となって舞いあがった横山は、赤い壁を飛び越えエンドゾーンへ(関学41−38)。

 逆転に沸く関学ベンチ。「1秒でも余分に渡すと必ずやられると思っていた」(関学QB三原)。
 最後のドライブで三原が徹底的に時間を使った結果、残った時間は僅か3秒。日大最後のキックオフリターン。勝利のためになんとかKR金へとボール渡す日大だが、その金へと関学カバーチームが襲いかかる。金の膝が地面に着いた瞬間、21世紀最初の「青と赤の対決」は41−38で関学に軍配が上がった。


個人賞受賞選手は以下の通り
 年間最優秀選手賞(チャックミルズ杯)  関西学院大学QB#9 三原 雄太(4年)
 甲子園ボウル最優秀選手賞  関西学院大学QB#9 三原 雄太(4年)
 甲子園ボウル敢闘賞  日本大学RB#21 金 雄一(4年)
 NFL特別賞  関西学院大学QB#9 三原 雄太(4年)

記事:早坂茂

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