3年ぶり。法政大学トマホークスが聖地・甲子園へ帰ってくる。
手に汗握る熱戦で日本大を下し、関東代表の座をつかんだ法政大学トマホークス。シーズン当初は主軸の卒業で攻撃力の低下が不安視されていたが、「ONE~勝~」のスローガン通り、チーム一丸となって甲子園への道を切り開いた。
今季の法政大は、QB高島やLB鵜沼(現;パナソニックインパルス)など、長年主力として戦ってきた選手が抜けた。その影響からか春季初戦の関西大戦では、QBからWRへのパスが繋がらず、1stダウンの更新さえままならないという内容でほろ苦いスタートを切ることとなった。
スターター喪失の穴を埋めるべく、昨季はDLとして活躍し、U-19日本代表の小林をOLにコンバートするなど、頭を悩ませながらも攻撃の補強に力を注いできた。そんなチーム作りがあっさりと裏切られたことに、「これから作り直してどこまでいけるか」と、青木監督は頭を抱えたそうだ。
しかしその後、攻撃は短いパスをつなげる当初の方針から、ランプレーを中心としたものに変更。さらに選手起用の面でもQBを寺村、近藤の二本柱とし、新しい攻撃のチーム作りを始動させたことでプレーの幅を広げることに成功した。
他校に比べ小柄な選手が多い守備陣では、伝統的なスピードに加え、ハードタックルを徹底。また、どんなシチュエーションにも対応できるようにと、「選手自身で考える」ことに重点を置き練習に取り組んできた。
これらの地道な努力が、秋季リーグ戦4戦で完封勝利をおさめるなどの結果に表れた。
チームの志気も高まり、秋季リーグ戦は今年も全勝優勝。快調の法政大だが、ひやりとする試合もあった。
第5節の慶応大戦。相手の綿密なスカウティングに苦戦し、攻撃権をなかなか奪うことができない。逆転に次ぐ逆転と息つく暇もない試合は、試合終了間際にK谷澤が同点のFGを決め危機的状況を脱すると、そのままタイブレークへ突入。
QBサックで後退するも、QB寺村からWR恒吉へのパスが決まり決勝TD。ここぞという場面で冷静なオフェンス陣、ディフェンス陣のチームワークを見せつけ、粘り強さで勝利を手にした。
迎えたあずまボウルは、ライバル日本大との決戦。戦前の下馬評を覆し、鍛え抜かれたチーム力と粘り強さはここでも発揮され、試合は、今季の法政大の集大成とも言える内容となった。
同点に追いついた2Q。この試合でMVPを獲得したLB田中がインターセプトを決めモメンタムを奪うと、すかさず攻撃陣がTDで応える。前年度の覇者・日本大に何度も追いつかれそうになるが、安定した守備で逃げ切った。
最後は、同点となるTFPのキックを日本大の名キッカー井ノ口がまさかの失敗。運も味方につけ、見事勝利を手にした。
「勝つ」ことにこだわり続けた一年。攻撃力の低下や、シーズン序盤の不本意な成績も、チームが一つになることで乗り越えてきた。 目標とする「ONE~勝~」には3つの想いが込められている。一人ひとりが輝き、チームみなで同じ目標へ向かい、学生日本一を手にするということ。
残す「ONE」はただ一つ。法政大学トマホークスの躍進は続く。
記事;中西菜摘(スポーツ法政新聞会)
編集;畠中隆好/OfficeNEAR(甲子園ボウルPJT)
写真;スポーツ法政新聞会