東日本代表・早稲田大学ビッグベアーズ
QB柴崎哲平(3年) 「自分が日本一のプレーヤーになる」。強い決意の下、早稲田オフェンス陣をけん引するのが、QB柴崎哲平だ。柴崎がエースQBの座を射止めたのは今年のこと。昨年までは、主将としてもチームの中心を担っていたQB坂梨陽木の横で、技術面はもちろん、リーダーシップの面でも刺激を受け成長してきた。夏には大学日本代表にも初選出され、学生界屈指のQBとして評価は高い。

これまでの早稲田は、鉄壁のディフェンスに定評があった。しかし今季は一味違う。オフェンスが試合の主導権を握っていくのだ。攻撃の起点となる柴崎の持ち味は、パス精度の高さ。その裏には豊富な経験値がある。小学校3年生からフラッグフットボールを始めて以来、フットボール一筋12年。そのキャリアのほとんどをQBとして歩んできた。長年の経験に裏打ちされた相手ディフェンスの弱点を突く『洞察力』は、柴崎ならではの強みだ。得意のパスに加えてランを効果的に使い、今季積み重ねた得点はリーグ最多の194。「自分のパフォーマンスを出せばチームが勝てる。自信につながった」と、手応えを感じたシーズンだった。

そんな柴崎にとって今回の甲子園ボウルは、夢舞台であると同時にリベンジの舞台でもある。高校時代、早大学院高のエースQBとして出場した2度のクリスマスボウル。4連覇中のチームを背負い臨んだ2年時は栄冠を阻まれ、3年時は相手に連覇を成し遂げられた。奇しくもその相手こそが関西学院高だった。「4年生達を日本一にしたい。この先輩たちと日本一になりたい」。高校時代から共にプレーしてきたチームメイトも多く、大一番に懸ける思いはひとしおだ。

苦汁をなめたあの日から3年。再び雌雄を決する時がやってきた。「今年1年やり切った自信があるし、あとは全て出すだけ。今までの日本一へのチャレンジより自信があります」。創部史上初の学生日本一へ。成長を遂げた司令塔が『頂』へと先導する。

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記事;吉田優(早稲田スポーツ新聞会)
写真;元田蒼(早稲田スポーツ新聞会)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)
RB元山伊織(4年) 今シーズンのBIG BEARSオフェンスを語るにおいて、この男の存在は欠かせない。RB元山伊織。関東一を誇る早稲田の攻撃陣を、泥臭いプレーと熱い情熱で甲子園へと導いたチーム1の立役者だ。  大阪の豊中高校でプレーしていた最後の関西大会では関学高に負け、3年間の青春に幕を閉じた。早稲田に入学した理由の一つには「大学に入ったら関学を倒したい」という思いがある。元山の甲子園ボウルに懸ける思いは誰よりも強い。そんな高校時代の元山にとって、現在同期として共にプレーをするパワー型RBである片岡は、まさにスーパースターのような存在であったという。早稲田への入学後は「末吉2世」と注目を集める片岡の側で、常にライバルとして切磋琢磨してきた。

昨年もスターターとしてチームの地上戦を担っていた元山であったが、日大に敗れ甲子園への出場はかなわず、悔し涙をのんだ。昨年の雪辱を果たさんとオフェンスリーダーとして臨んだ今季。ケガに悩まされ満足にプレーのできなかった片岡の分も、これまでの試合で元山はただ1人の大黒柱としてフィールドに立ち続け、走り続けた。関東1部リーグTOP8で7TD、610ヤードを獲得。リーディングラッシャーに輝くなど、大きな成長を遂げた。

リーグ戦終盤、横浜スタジアムで行われた最後の2戦。元山のプレーは圧巻の一言であった。昨年と比べカットバックのキレが格段に向上、スピードにも磨きがかかった。天王山となった最終節の法政大戦では、チームの勝利を決定づける2つのTDを決めるなど、まさにエースRBとしての実力を結果で示した。その姿は、元山が憧れたかつてのエースRB須貝和弘を彷彿とさせる、芸術的な走りであった。その須貝をもってしても届かなかった学生日本一。その栄冠を掴むための戦いに元山は挑む。

「自分が一番活躍する、目立つという気持ちは忘れずにやりたい」と、常に一番になることを目標に試合に臨んできた。チームで一番、関東で一番、そして日本で一番のRBに必ずなる。やっと巡ってきた大舞台。『頂』へと歩みを止めない元山の足が、甲子園に早稲田の名を刻む。

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記事;涌井統矢(早稲田スポーツ新聞会)
写真;中澤紅里(早稲田スポーツ新聞会)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)
WR遠藤健史(4年) そのクイックネスは見るもの全てを魅了する。日本一のパスユニットをつくり上げるためには欠かせない、早稲田レシーバー陣の要。遠藤健史。抜群の決定力を誇る早稲田の韋駄天が甲子園を駆け抜ける。

今シーズンは持ち前のスピードとキャッチ力を活かし、リーグ戦では22回のレシーブ、309ヤードを獲得。4TDを叩き出すなど、パスユニットのリーダーとして関東1位の獲得ヤードを誇るオフェンスを牽引。チームのリーグ戦優勝に大きく貢献した。同じポジションには高地駿太朗やブレナン翼といった長身のレシーバーが揃うだけに、遠藤には高さとは別の役割が求められる。そのことは遠藤自身が一番理解している。決して高いとは言えない身長に、フットボーラーとしては細身の身体。体格がものを言うフットボールの世界において、「スピードとキャッチングでは誰にも負けない」と、高校時代からプレースタイルを一貫してきた。

『日本一』への思いは人一倍強い。早大学院高出身の遠藤は、3年生で出場したクリスマスボウルで関学高に敗れ、自身の代で栄冠を手にすることは叶わなかった。大学1、2年次にもチームは甲子園ボウルに出場。2年生で出場した際は、遠藤自身何度かレシーブを見せたが、またしても関学に敗れ日本一を手にすることはできなかった。それだけに、最終学年で巡ってきたチャンスに懸ける想いは強い。

自分たちの代になり、練習量をかなり増やすなど大きな改革を行なった。ここまでついてきてくれた後輩たちには、高校時代にはなかった想いを抱いた。「頑張ってきた下級生を日本一にさせたい」。遠藤はこれまで共に戦ってきた後輩たちへの感謝を、日本一という最高のカタチで贈り届けることを誓う。

「頑張ってきた結果が日本一になれないと、自分たちの取り組みが証明されない」。今回で5度目となるBIG BEARSの甲子園ボウル。遠藤を筆頭とするパスユニットが空中戦を制し、関西の雄・関学を打ち破る起点となる。早稲田の歴史を変え、自らのアメフト人生を証明する時がやってきた。

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記事;涌井統矢(早稲田スポーツ新聞会)
写真;成瀬允(早稲田スポーツ新聞会)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)
LB中村匠(4年/副将) 2016年12月18日の阪神甲子園球場。早稲田守備陣の主戦であるLB加藤樹に注目が集まる中、最も観客を沸かせたのは背番号44。アグレッシブなタックルで、関学の強力RB陣を脅かしたあの2年生が甲子園に戻ってきた。昨季から2番を背負う早稲田の新守護神・LB中村匠は、大舞台でこそ別格の輝きを放つ。

今季、ロスタックルやサックといった数字に残る結果は出していない中村だが、その存在は早稲田のLB陣にとって『絶対』だ。素早い判断力とタックルのクロージングスピードはチーム随一。パスプレーにもランプレーにも必ず絡み、攻撃の芽をつみ取る。リーグ戦は全試合スタメン出場。ディフェンスの要として、中村は常にフィールドに立ち続けた。

ディフェンスリーダーとして、周りとのバランスを気にするあまり、「クリーンなフットボールを求め過ぎた」と語る中村。甲子園では初心に返り、自らのプレーの最大の強みである「思い切りの良さ」を前面に出す。「1ヤードでも多く止める」と、強い意気込みをもって挑む。

中村には、憧れと語る二人の先輩がいる。現在IBMBIGBLUEでプレーをするLBケビン・コグランと加藤樹だ。高校時代から全国に名を馳せ、大学日本代表としても活躍した偉大な2つの背中を、早稲田に入ってからずっと追い続けた。いつか必ず超えると努力を怠らず、最終学年として迎えた今季、憧れの二人ですら届かなかった『頂』へ。その挑戦権を再び勝ち取った。

圧倒的な身体能力に、大学4年間で培った経験とインテリジェンスも加わり、学生界屈指のLBに成長した。そんな中村が、早稲田のディフェンスの中心に立ち、創部史上初の日本一を狙う。いま一度言おう、中村匠は『大舞台でこそ別格の輝きを放つ』。チャンスは来た。甲子園は、早稲田の背番号2を待ち望む。

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記事;涌井統矢(早稲田スポーツ新聞会)
写真;元田蒼(早稲田スポーツ新聞会)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)
<DL斉川尚之(4年/主将) 主将らしい男だ。早稲田のDL斉川は、冷静さの反面、熱い闘志を持っている。今季はBIG BEARSの精神的支柱として、チームを甲子園まで導いてきた。プレーでもチーム最多の4QBサックと8.5回のロスタックルで、秋季リーグMVPを受賞する活躍。チームスローガン『気魄』を体現する主将が、チームを史上初の大学日本一へ導く。

斉川は高校時代、バスケットボール部に所属。フットボールを始めたのは、大学入学後だ。当初持っていたコンタクトへの戸惑いやケガも乗り越え、2年時には甲子園ボウルのフィールドに立った。その後もプレーの精度向上に努め、DLの中核に成長。また、常に周囲を冷静に見渡す人間性も評価され、高校までフットボール未経験という中で、異例の主将抜擢が決まった。

今季、斉川はDLとして、プレースタートへの強いこだわりを取り組んだ。「お情けMVPだと思っている」。そう謙遜するが、斉川は高いパフォーマンスを発揮する。110キロを超える体重、そのフィジカルの強さだけでなく、俊敏性も兼ね備えるプレーは、関東王者・早稲田ディフェンスの中核だ。甲子園の舞台でも、斉川のプレーは関学オフェンスの脅威となるに違いない。

日大に敗れ、甲子園にあと一歩届かなかった昨季。日大不在の今季は、早稲田にかかるプレッシャーもあった。辛勝となったリーグ初戦と2戦目は、全体として「気持ちが入りすぎた部分があった」と見ている。その後、次第に調子をあげ、チームは全勝優勝を果たした。しかし斉川に慢心はない。「この内容では甲子園では勝てない」。優勝を決めた法政大戦でも、そう思ったという。主将の冷静さが、チームのさらなる成長を生む。目標は甲子園ボウル出場ではなく、そこで勝つこと。

甲子園という舞台―。2年前にもフィールドに立った斉川は、大観衆の中でプレーする喜びを感じた。関学に敗れたあの試合、当時の4年生の悔し涙を、斉川は忘れていない。今回は最終学年として、主将として、もう一度立つあの舞台。相手は同じ関学だ。「甲子園ボウルで優勝して、ワセダの歴史を変えたい」。まだ見ぬ『頂』へ向かうBIG BEARSの先頭に、斉川が立つ。

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記事;元田蒼(早稲田スポーツ新聞会)
写真;元田蒼(早稲田スポーツ新聞会)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)
DB小野寺郁朗(4年/副将)

DBとして幾度となくチームを救ってきた小野寺。身長は170センチと決して高くはないが、驚異の身体能力と球際の強さで空中戦を制してきた。強豪・関学を撃破し、悲願の学生日本一をつかみ取るためには、この男の力が不可欠だ。

高校時代は硬式野球部に所属していた小野寺は、大学入学を機にフットボールの世界へ飛び込んだ。未経験ながら高いフットボールセンスを見せ、大学2年時から先発の座を任された。その年の甲子園ボウルに出場。しかし「良いプレーもあったが、やられてばっかりだった」と、関学攻撃陣の強力なスキルに歯が立たず、涙をのんだ。この悔しさをバネに、小野寺は人一倍鍛錬を重ね、今ではチームに欠かせない存在となった。

ラストイヤーとなる今年、小野寺は副将とDBリーダーを兼任し「日本一のDBユニットをつくる」と意気込んだが、今夏に病に倒れ戦線からの離脱を余儀なくされた。「今年のチームに貢献することができていない」。フットボーラーとして苦境に立たされた。しかし小野寺は折れることなく、懸命に復帰への道を突き進んだ。そして、リーグ最終戦で戦列に復帰。ブランクを感じさせないフィールディングで法政大WR陣に脅威を与え、「チームを勢いづけることができた」と、2つのインターセプトを奪取。完全復活を果たし、関東制覇に大きく貢献した。

甲子園で早稲田に立ちはだかる相手は、2年前と同じ関学。「借りを返すという意味で燃えている」と、気合十分で決戦の時を迎える。これまでBIG BEARSが一度も成し得ていない学生日本一。その栄冠は、小野寺の手で引き寄せる。

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記事;成瀬允(早稲田スポーツ新聞会)
写真;元田蒼(早稲田スポーツ新聞会)
http://wasedasports.com/
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)