聖地への帰還。青の戦士達は再び頂点を目指す。

忘れることはなかった。2017年12月17日。聖地に鮮やかな赤い花が咲いた。日大と3年ぶりの赤青対決。試合序盤から歯車が狂い始めた。試合開始2プレーでエースWR松井理己が負傷離脱。さらに、予想を上回る日大の攻守陣、最優秀選手に選ばれた1年生QBに苦戦した。第4QにRB山口祐介のTDで1TD差。最後のシリーズに望みを託すも、QB西野航輝がインターセプトを許し万事窮す。17—23で敗れ、日大に27年ぶり21回目の学生日本一を許した。東日本代表が優勝するのは11年ぶり。関西2位から初の下剋上で聖地行きを決め、連覇を狙った関学は、涙に暮れた。

負けから始まったチームは荒波にもまれた。5月の日大との定期戦で起こった「悪質タックル」問題。大きな社会問題に発展し、連日報道が続いた。直後の日体大戦では、関東TOP8最下位のチームに24年ぶりに敗北。鳥内監督は騒動の影響について「心の中ではあるかもしれん」と話した。

秋に入ってリーグ戦が始まっても、苦しい試合が続く。開幕から4連勝で迎えた第5節京大戦。第4Qまでの得点はFGのみ。京大の不屈の魂に苦しみ、得点力不足と減らない反則に嘆いた。続く、第6節では関大に70年ぶりに引き分け。関西3位の可能性も浮上した。だが、2週間後の立命館戦は31—7で圧勝。5勝1分で2位だった関学が全勝の立命館を破り、逆転優勝を果たした。

立命館との再戦となった西日本代表校決定戦。関学は先制を許し、QB西野らが負傷退場した。エースQB奥野耕世もインターセプト3つ、そのうち1つがリターンTDと暗雲が漂う。だが試合残り2分を切って、自陣36㍎から始まった最後のシリーズ。エース奥野が神懸かりのパスを2度成功させ、ゴール前7ヤードまで迫った。点差は2点。

最後はK安藤のFGで劇的大逆転。選手たちは歓喜の輪をつくり、そして泣いた。光藤航哉主将は「最高のゲームでした。最後まで諦めず、みんなが1プレー1プレーに懸けた結果」と胸を張った。3年連続52回目の甲子園ボウル出場を決めた。

約束の地へ帰ってきた。攻撃の要は、QB奥野、西野、光藤の3人からなる「青の三銃士」。最終節の立命館戦では、3人の併用策がうまく機能し、強力な守備陣をかく乱させた。特に2番手の西野の存在が大きい。西野はQBの他にRB、WRの経験があり、OL以外の攻撃ポジションをこなせる。パスを受けるWRには、エースWRの松井、小田、阿部らが名を連ねる。

守備は全員で寄って止めることを徹底したい。今季、リーグ戦でわずか36失点。経験豊富なDL三笠やDB横澤を始め、LB海崎やDB畑中など、若手も含まれバランスが良い。学年を問わず、ビッグプレーを狙うことができる選手がそろう。

キッキングも目が離せない。K安藤は今季52得点で最多得点王。最優秀スペシャル選手にも選ばれた。「攻守蹴」の三拍子がようやくそろった。

『頂』しか見えていない。

スローガン「FIGHT ON」を掲げ、「社会人に勝って日本一」を目指してきた。学生日本一を懸け、早稲田と2年ぶり2度目の対戦。昨年の悔しさを胸に、青き戦士たちが聖地で凱歌をあげる。

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記事:松尾誠悟(関西学院大学体育会学生本部編集部)
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写真:P-TALK
P-TALK http://www.p-talk.jp/
編集:畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)