QB奥野耕世(2年)

新星・QB奥野耕世は目覚ましい成長を続ける。この春、昨季エースを張ったQB西野やQB光藤に割って入るように登場。昨秋から辛口で有名な鳥内監督の評価も高かった司令塔は、エースにまで上り詰めた。

リーグ戦序盤は調子が上がらなかった。開幕から2戦目の神戸大戦では、2本のインターセプト。監督からは「一人相撲」と評価された。第5節の京大戦では、持ち味のパスで84ヤード。第4QまでTDを奪えず、途中交代を余儀なくされた。だが、第6節の関大戦で恐るべき力を発揮した。7点差を追う試合残り2分2秒。一度はサイドラインに下がるも、緊迫した場面で再投入された。ノーハドルでも冷静にパスを成功。7回全てのパスを決め切り、土壇場にWR阿部(拓)へのTD。「気負わずやれた」と初の2ミニッツオフェンスにも動じなかった。関大戦のパス成功率は驚異の82.4%を記録。若き司令塔が覚醒した瞬間だった。

強心臓とも言うべきか。甲子園ボウルを決めた西日本代表校決定戦。立命館に先制を許し、常にリードされる試合展開だった。「追いつかないとあかん」。焦りもあり、奥野は3つのインターセプトを喫し、そのうち1つはリターンTD。持ち味であるスクランブルが裏目に出た。「自分でしんどい状況をつくってしまった」。試合中に、先輩から「大丈夫や」となぐさめられた。 2点を追う残り2分を切った場面。自陣36ヤードから大逆転ドラマが始まった。フィールドには背番号3が向かった。1つはWR松井へ、もう1つはWR阿部へパス成功。神懸かったパスを決め、FGまで持ち込んだ。それまでと、まるで別人かのようなプレーの連続。「考え込みすぎずに、入ってきたプレーをするだけって思った」。勝利を告げる笛が鳴ると、天を仰ぎ男泣き。涙が止まらなかった。「ほっとした。4年生を引退させなくて良かった」と、安堵の表情を浮かべた。

聖地の舞台に立つ。昨年は、同級生の林(日大)が躍動する姿を見つめた。「悔しいとかではなかったが、うらやましかった」と振り返る。エースとして臨む甲子園へ「やるべきことをやるだけ。楽しみ」と胸を踊らせた。若き司令塔・奥野が甲子園の大観衆を沸かせる。

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記事;松尾誠悟(関西学院大学体育会学生本部編集部)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

WR小田快人(4年)

キャッチで魅了するWR小田快人に注目だ。今季、主力として6試合に出場。リーグ2位の28回のパスキャッチで、2TDを奪った。総獲得ヤード数は427ヤード。持ち前のスピードと捕球センスでフィールドを駆け回った。

スピードスターは、4年前にも聖地・甲子園を沸かせた。名門・近江高(滋賀)野球部の3年、第96回全国高校野球選手権大会に出場。強豪校の2番センターでスタメン出場した。初戦の鳴門高(徳島)戦では、チーム唯一の三塁打、2打点の活躍でチームの勝利に貢献。現在、プロ野球の阪神タイガースで活躍する植田(海)と上位打線をけん引。2盗塁を決め、俊足を印象づけた。チームは3回戦で敗退するも、全国の舞台で輝きを放った。

自ら野球の道を断った。鳥内監督が、小田の身体能力を高く評価。すぐさまアメフトの世界に誘い込んだ。強豪大学で野球を続ける選択肢もあった。チケットをもらい、リーグ戦を直接観戦に行った。捕れるパスを捕れていなかった選手を見て、「これならできるかもしれない」。近江高で守備職人だった小田の目に止まった。そして野球とは違う道で、再び聖地を目指すことを決めた。

決して平坦な道のりではなかった。大学に入り、新たな戦地はレシーバー。野球で培ったスピード、捕球センスを活かしたプレーに、誰もが心惹かれた。だが慢性的な肉離れで、継続的に試合に出られず。恵まれた身体能力を生かし切れなかった。「何もできない自分が悔しかった」。4年生になり、ようやくスタメンで出場できる状態に回復。明るいスピードスターがフィールドに戻ってきた。

4年ぶりに聖地で暴れまくる。甲子園で活躍するために入ったファイターズ。今年が最後のチャンスだ。4年前に三塁打を放った舞台で、「今度は3TD取りたい」とはにかんだ。再び聖地の主役となるため。甲子園に愛された男が、大観衆を沸かせる。

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記事;玉越裕基(関西学院大学体育会学生本部編集部)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

K安藤亘祐(3年)

今年のキッキングチームは一味違う。K安藤亘祐は、昨年の西日本代表校決定戦4回戦からスタメン出場。どんな厳しい場面でも決して動じない安定したキックで、チームから絶大な信頼を勝ち取った。

目覚ましい活躍だった。今季は全試合にスタメン出場。第5節の京大戦で、第4Qまでにフィールドゴール(FG)を3本成功。全23得点中、11得点をキックで奪った。さらに第6節の関大戦は、終盤までリードを許す展開。試合終了残り5秒からのTDで1点差に迫った。その後のポイントアフタータッチダウン(PAT)はキックを選択した。外せば敗北が決まる場面で、安藤のキックが成功。土壇場でチームを救ってみせた。

そして西日本代表校決定戦決勝。2点を追う残り2秒から、逆転サヨナラFG。甲子園ボウル出場を決めるヒーローとなった。リーグ戦では52得点で、最多得点王。最優秀スペシャル選手賞に選出された。この男なくして、甲子園ボウル出場は果たせなかった。

恩師の教えを大切にプレーしている。高校時、元キッカーでOBの大西氏(08年卒)に指導を受けた。「いつも通り蹴れ」、「機械になれ」。キッカーとしての流儀を一から学んだ。フィールドに入ってから、サイドラインに戻るまでをルーティン化。点差やヤード数は頭に入れず、呼ばれたら、ただ蹴りに行くだけ。「何も考えずにボールに当てることだけを意識している」。教えを忠実に実行し、高校2、3年時には日本一に貢献。2年時には、最優秀バックス賞(三隈杯)を受賞した。不屈の精神力の原点は、高校時代にあった。

飛躍を遂げた1年間の集大成を見せる時が来た。元キッカーの鳥内監督も「自分がやらなあかんと思って、やってくれている」と、評価するまでに成長。日本一へ、ついに大舞台に立つ。「甲子園は高校からの夢舞台。いつも通り蹴ってチームの勝利に貢献する」。チームの命運を託されるキック。甲子園でも魂を込めた右足で、勝利の虹を描く。

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記事;玉越裕基(関西学院大学体育会学生本部編集部)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

LB海崎悠(2年)

今、ファイターズの守備の中心にいるのは、LB海﨑悠だ。その頼もしさは、2年生ながら、上級生にも引けを取らない。

1年時には、リーグ戦初出場、初先発にして、いきなりインターセプトを披露。スタメンの座も勝ち取り、チームに新たな風を吹かせた。2年生になっても活躍は止まらない。今季のリーグ戦、第6節の関大戦。第2Qに得意のロスタックルを決め、相手の追加点を阻止した。だが試合は、関大と70年ぶりのドローとなり「ディフェンスで引き分けにさせてしまった」。責任感も人一倍強い選手だ。

持ち味である思い切りのいいタックルのルーツは、高校時にある。出身は追手門学院高。練習では、強いヒットをした時に音が鳴る特殊な機械を使用していた。多い時には、1カ月で1000回。積み重ねることで、身体に感覚を覚えさせた。「速く、激しいタックルができるようになりたい」と、何度も当たり続けた。高校時に積み重ねた、たゆまぬ努力が花開いている。

仲間の存在が海﨑を強くする。小学、中学時代は少年アメリカンフットボール池田ワイルドボーイズに所属。QB奥野、OL阿部(光)と共にプレーをしていた。しかし、海﨑は追手門学院高に進学。阿部と奥野は関学高等部に進学と、別々の道に。「もう一度、あいつらと一緒にプレーがしたい」。その思いから2人とプレーができる関学への進学を決めた。大学では、入学のきっかけとなった2人よりも先にリーグ戦初出場初先発。「2人には負けたくない。ライバル意識を持って一緒に試合に出ている」。エースを張るQB奥野とも切磋琢磨している。

決戦の幕が開ける。昨年も、1年生ながら甲子園ボウルに出場。「去年は負けた。会場も同じなので、リベンジしたい。ここで負けられない」と、闘志を燃やす。2年生ながら守備の要。海﨑悠が頼りとなる。

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記事;津田理於子(関西学院大学体育会学生本部編集部)
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DL三笠大輔(4年)

聖地の舞台に雪辱を抱く、1人の男が燃えている。DL三笠大輔だ。昨年の甲子園ボウルでもスタメン出場。元京大監督の名将、水野氏に指導を受けたパスラッシュが武器となっている。苦境でも、泥臭いヒットで攻撃の壁を砕く。第6節の立命館戦では、QBサックを決め、チームを勢いづけた。普段の性格は冷静。しかし、試合となれば獅子のごとく豹変する。

甘さに泣いた1年前。甲子園ボウルで、第4Qにケガで離脱。「後輩を育てていれば…」。苦戦する交代選手を見て後悔した。DLは体当たりで、攻撃陣を止めるポジション。ケガはつきものだ。判っていながら、後輩の育成を怠った。不穏な空気が伝わったのか、最強DLと言わしめた第一線が玉砕。「こんなもんやろ」と思った予想を不死鳥の複雑なプレーが上回った。1対1は止められるものの、2人以上の分厚いOLに翻弄された。悔しさを残し、大舞台を去った。

今季は、後悔の念を原動力にパートリーダーに就任。「下級生を甲子園ボウルに連れて行きたい」。その一心で、ラストイヤーを駆け抜けてきた。グラウンドだけでなく、家に帰ってからも後輩の練習をビデオで確認し、アドバイス。DLの旗頭として、できる限りの力を注いできた。その甲斐もあり、後輩の経験値も上がり、強いDL陣が復活。スローガン「Pump it」の通り、激しく泥臭いプレーが持ち味の集団となった。

「日本一になりたい」。純粋な気持ちを抱いた4年前。青軍団に足を踏み入れたのは、頂を味わうためだ。今でもその気持ちは変わらない。三笠が暴れまわる舞台が整った。日本一の座を争う相手は早稲田。不倒のRBに加え、日本代表のQB柴崎とWRブレナンのホットラインに警戒を強める。選手だけではない。高校時のヘッドコーチだった坂本氏が在籍。弱みは把握されている。それでも「4年間で、成長した姿を見せたい」。三笠にとって、最後の大勝負。学生日本一に輝き、真の強さを証明する。

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記事;南優希(関西学院大学体育会学生本部編集部)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

DB横澤良太(4年/副将)

守備の最後の砦(とりで)は俺だ!DB横澤良太は2年時からスタメン出場。1対1の強さを最大の武器にし、インターセプトを量産してきた。今季は相手チームから警戒され、パスがなかなか飛んでこない中、関西制覇を決めたリーグ最終節の立命館戦で今季初インターセプト。甲子園ボウル出場を決めた西日本代表校決定戦でも、RBへ強烈なタックルを食らわせ、ファンブルロストさせた。ビッグゲームの度に、必ずチームを救ってきた。

悔しさからはい上がった。下級生から第一線で活躍してきたビッグプレーメーカー。だが昨年のリーグ最終節、立命館戦。相手のスピード、競り合いに歯が立たなかった。もう一度ディフェンスの主役になるために、SNSのトップ画像を自分が1対1で負けた写真に設定した。反骨心を呼び起こし、練習では誰よりも声を出して追い込んだ。逆に試合の前日には、ビッグプレーを決めた写真に変更。「今までやってきたことに自信を持ち、自分が一番うまいと思ってプレーする」。集大成となる今季、再び輝きを取り戻した。

副将としても責任を全うしてきた。今年の幹部陣では、唯一スタメンに名を連ねる。「俺がプレーでチームを引っ張っていかないとあかん」。1対1に誰よりも責任を持った。個人の勝負で勝つ。練習から魂を込め、闘争心をチームに植えつけてきた。迎えた秋季リーグ戦では、7試合でわずか36失点。1年間の努力は結果で表れた。「ディフェンス陣全員が自分のできることをこなした。やってきたことが出せたと思う」と充実感を口にした。

日本一のディフェンスを目指しここまでやってきた。甲子園ではその真価が問われる。「甲子園でTDを0に抑えることができれば、日本一と言える。あとは死ぬ気でやるだけ」。ずば抜けたアスリートはいないものの、横澤を中心にユニットとして成長を遂げたDBパート。昨年どん底を味わった聖地・甲子園で、全てを懸けて、必ず借りを返してみせる。

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記事;玉越裕基(関西学院大学体育会学生本部編集部)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)