甲子園ボウルを前日に控えた14日(土)。東日本代表・早稲田大学の高岡勝監督と選手ら6人が意気込みを語った。

高岡勝監督

「昨年『文化の差』と表現した力の差を少しでも縮めるために努力してきた。実力を出し切れなかった昨年の経験を活かしたい」と語る。「(関学大は)負けられない試合で必ず勝つところに強さがある。リーグ戦、ウエスタンジャパンボウルと見てきたが、すべて違うチームのように見えた。甲子園ボウルでの戦い方も変わってくると思う。」とまだ底の見えない相手との対峙を想定する。理想のゲームプランに“先行逃げ切り”を挙げ、「ファーストシリーズを全力で止める」と、キックオフから目が離せない予感を漂わせた。

練習の順調さや、QB#1柴崎ら、怪我で戦列を離れていた主力選手が復帰していることから、チーム状態は本番に向けて上向いている。「選手から関学大に勝ちたいという熱い気持ちを強く感じる」と、明日にかける思いの強さが溢れた。

「未経験者が4割を占め、ほとんどのメンバーが一般受験で入ってきている。フットボールエリートが集まるチームではないので、フットボールの根幹である「あたる」「追いかける」を基本に、4Q終了まで走り続けられるチームを1年間かけて創り上げてきた。昨年負けてから新しいチームとして成長してきた集大成を明日見せたい」と、日本一の高みを目指す。

LB#88池田直人(4年/主将)

昨年の敗戦を受け、より全員で戦うことに意識を向けた。池田は「昨年より個人で状況を打破できる選手が少ない」と、感じているという。「スピードで勝つ」ことを念頭にチーム全体で走力を鍛えてきた。1試合を通して走り抜けるようにと1年間走り込んできた。

下半身強化のためのランメニューの増加にとどまらず、食事面でも高い意識を保ってきた。好きなラーメンや揚げ物、甘い物などを制限し、池田自身は秋だけでも体脂肪率を5%ほど落としたという。今年から新しく早稲田でトレーナーを務める一原トレーナーらのトレーニング改革も助力し、怪我をしにくい身体を1年かけて創り上げた。

技術的には、難しいことを考え過ぎて消化不良を起こしていたと昨年を振り返り、1対1の勝負など、基本を大切に強化したという。

「どれだけ思い切ってできるかが重要。プレーの精度も仕上がっている」と、自信をのぞかせた。

池田の個人的な想いも強い。「高校から関学に負け続けているので、日本一になりたいという想いは年々増している」。関学大の主力メンバーに高校時代の対戦相手がいることには、「クリスマスボウルでは、同じメンバーに細かいミスから流れを切れずに負けたので、今回こそは勝ちたい」と、人一倍甲子園ボウルにかける思いは強い。

「やれることはやってきた。気持ちで負けないように、準備してきたことを信じて戦う」と、明日に備えた。

DL#66二村康介(4年/副将)

「この場に来てようやく実感が湧いた。帰ってきたんだな」と、感慨深く口にした。

関学大のOLは「ブロッキングがうまい」と称えながらも、「自分たちには圧倒的なうまさはないが、気持ちの強さには誇りを持っている」と、負けるつもりは毛頭ない。また、副将という立場については、「チームの色を出すのは池田(主将)だが、自分たちもチームリーダーとして3人で引っ張ってきた」と堂々と語る。

そんな二村であるが、アメフトを始めたのは大学からだ。サッカーからアメフトというコンタクトスポーツへの転向により、身体づくりから始めることになり、これまで頭で考える動きと実際の身体の動きのギャップから起こるケガに苦しんできた。ケガをしても同ポジションの選手や、同学年の成長を感じることで、常に競争心を持ち自身の成長に繋げたという。

日に日に身体が理想に近づき、苦しみ続けたケガも少なくなったことで、昨年の甲子園ボウルに出場できた。「初心者から成長して、昨年の甲子園ボウルに出場できたことで責任感を持つようになった」と、副将に立候補したという。最上級生として、副将として、同じように初心者からスタメンを目指す下級生に対して偉大な背中を見せる決意だ。

QB#1柴崎哲平(4年/副将)

「この場に帰ってきた。昨年の敗戦やこの4年間を思い出す」。甲子園ボウルを待ち焦がれていた。指を怪我し満足にプレーができていなかった柴崎だが、「もうプレー中は気にならない。なんとか万全までこられた。明日出し切るのみ」と、明日に向けて調整を完了した。

関学大に勝つにはボーダーラインを「35点」と強気に設定した。その言葉は、昨年からの成長を自身で感じているからこそ。チーム全体でメンタル面を鍛えるトレーニングを導入し、安定したクォーターバッキングや勝負所でのメンタルの維持を身につけた。

成果はリーグ戦で見られた。法政大戦では、前半7-21のビハインドで昨年の甲子園ボウルを思い出したという。「ここで逆転しなければ去年と一緒」と奮起。逆転勝利を収めた。

「1年間鍛えてきたスピードを活かせるようなクォーターバッキングをして、お世話になった監督を日本一にしたい」と恩返しに燃える。

K#96髙坂將太(3年)

「(昨年の甲子園ボウルでの)思い残しはパントブロック」。昨年の甲子園ボウルで一番の悔しさをかみしめていたのは髙坂だ。2年生ながらに出場した昨年の甲子園ボウルでは、人生初のパントブロックを経験した。キッカー1年目であった緊張や、周囲の力に頼りすぎた弱さを反省した。

この1年は最長55ヤードを誇るFGを武器に佐藤コーチのもとでキックに磨きをかけた。「佐藤コーチのおかげでキッカーが楽しくなった。自分が一番チームに貢献できるポジション」と、ポジションに誇りを持っている。

「キッカーなら誰しもが憧れる瞬間。キッカーとしての真価が問われると思うし、もしそのときが来たら楽しんで蹴れると思う」と、“日本一のキッカー”と仰ぐ佐藤コーチも経験した日本一をかけたキックに、期待を膨らませる。

WR#6ブレナン翼(4年)

「試合に向けて楽しみ。むしろ会見に緊張している」と最後に登場し、場を和ませたのはブレナンだ。昨年の甲子園ボウルを振り返って、「関西のチームのディフェンスの速さやフィジカルの強さ、フットボールIQの高さを感じた」と、今年も立ちはだかる壁を思い出す。その経験を活かし、昨年よりもQB柴崎とのコミュニケーション量を増やし、他のレシーバーとも技術やアドバイスを交換し合った。特に柴崎とは「今年通ったプレーでも、より速さと正確さを求めた」と、1年を通じて意識したのは関学大であった。

明日のリターナーとしての出番について聞かれると「サプライズで」と期待感を持たせるコメントを残した。

両親がアメリカに住むブレナンは、明日は母親が見に来るという。「活躍する姿、勝てるプレーをすることで母が喜んでくれると思う。勝ちたい」と、明日に向けて意気込んだ。

早稲田が昨年の雪辱を果たすことができるか、それとも関学大が揺るぎない王者として君臨するか、雌雄は明日決する。

記事;沼田 眞希(Pump Up学生アメフト)
写真;松島健悟(Pump Up学生アメフト)
編集;畠中隆好(甲子園ボウルPJT)