全日本大学アメリカンフットボール選手権決勝「三菱電機杯第74回毎日甲子園ボウル」が15日、阪神甲子園球場で行われた。

対戦は、4年連続53回目の出場で2連覇30回目の学生王座を狙う西日本代表・関西学院大学ファイターズ(関西学生リーグ)と、2年連続6回目の出場の東日本代表・早稲田大学ビッグベアーズ(関東大学リーグ)の2年連続3度目の顔合わせ。

試合は逆転に次ぐ逆転で、関学大が38-28で勝利。今季限りで勇退する同校・鳥内秀晃監督の花道を飾った。

甲子園ボウル最優秀選手は関学大WR#81阿部拓朗。敢闘選手は早稲田WR#6ブレナン翼。また年間最優秀選手は立命館大学QB#19荒木優也(いずれも4年)がそれぞれ受賞した。

試合は先攻の関学大が、ランプレーの大黒柱RB#21三宅昂輝(3年)の中央突破、またエースWR#81阿部拓朗(4年/副将)へのロングパスで陣地をすすめ敵陣へ。

「3アンドアウトでファーストシリーズを終わらせたい」(早稲田・高岡勝監督)としていた早稲田にとって嫌なムードが漂う。

関学大は敵陣32ヤードからの攻撃をパス失敗などで前進できずFGを選択。K#8安藤亘佑(4年)が46ヤードを成功させて3点を先制。

追う早稲田はQB#1QB柴崎哲平(4年)がラン、パスを織り交ぜてゲインを重ねる。Qタイムを挟んで。2Q開始7秒にQB#8吉村優(3年)が左にスニーク、そのまま2ヤードを走りTD。7-3と早稲田が逆転した。

しかし、関学大はQB#3奥野耕世(3年)からWR阿部への17ヤードロングパスなどでゴール前8ヤードまで前進。そして右サイドから左に切れ込んでエンドゾーンに中央に入りこんだWR阿部へTDパスが通り、10-7と逆転する。

その後も早稲田の攻撃を3アンドアウトに抑えて攻撃権を得ると、RB三宅の20ヤードロングランでゴール前5ヤード。またもQB奥野からエンドゾーン中央に入ったWR阿部へTDパスを通し、17-7と10点差とする。

一方の早稲田はWR#19伊藤裕也(4年)への25ヤードパスでダウンを更新すると、「まだ甲子園ボウルでTDを取っていないので、取りたい」と、試合前に語っていたエースWRブレナン翼(4年)が、関学大DB陣を抜き去ってQB柴崎からのパスをキャッチ。そのまま55ヤードを走りきってTD。14-17と3点差に迫る。

引き離したい関学大。前半終了前45秒に敵陣11ヤードからQB奥野の放ったTDパスが決まったが、痛恨のホールディングの反則。早稲田守備の前にエンドゾーンを陥れることが出来ずFGを選択。これはK安藤が確実に決めて20-14で前半を終了した。

後半に入って試合はもつれる。

早い時間帯から、オンサイドキックを敢行するなど果敢に攻める早稲田。4thダウンパントのフォーメーションからも、ホルダーがランプレーを試みるスペシャルプレーをみせたが、関学大は落ち着いてこれに対応してダウン更新を阻止。逆に敵陣43ヤードの好ポジションから攻撃を開始。

ここでRB#26前田公昭(2年)が左オープンから右にカットして早稲田守備を翻弄しながら、そのまま42ヤードを走りきってTD。27-14と点差を広げる。

粘る早稲田大は、キックオフをキャッチしたリターナーのブレナンが75ヤードのビッグリターン。関学大陣20ヤードからの好位置で攻撃を開始。QB柴崎が右エンドゾーンぎりぎりに投げたパスを関学大DBがカット。しかしその浮き球をWRブレナンがキャッチしてTD。21-27に。

その後、早稲田大は攻撃を進め、第3Q終了間際に、WRブレナンが右斜めに走りこんで関学大DBを振り切りQB柴崎からのパスをキャッチ。そのままエンドゾーン駆け込みTD。28-27と再逆転に成功した。

しかし「試合時間が15分Qと長い。第4Q勝負と思っていた」と、関学大・鳥内秀晃監督が試合後語ったとおりの展開となる。

戦術、戦略に長けた関学大は第4Q、RB三宅への29ヤードパス、TE#90小林陸(1年)へのショベルパス、RB前田のランプレーなどでダウンを連続更新。最後はRB前田が1ヤードを飛び込んでTD。さらに2ポイントコンバージョンを成功させ、35-28とまたも試合をひっくり返す。

さらに9分34秒にはK安藤が22ヤードのFGを蹴りこんで38-28と試合を有利に運ぶ。

初の学生王座を狙う早稲田も必死に反撃するが、関学大の守備陣に追加点を阻まれた。

監督として12度目の学生日本一を勝ち取った関学大の鳥内監督は「学生が良くがんばってくれた。1年間努力してきた結果。もう少し成長してほしかったけど。早稲田のホットライン(QB柴崎→WRブレナン)は凄かった」と激戦を振り返った。

敗れた早稲田の高岡優監督は「思いどおりに行かない。もう少しランが出ればよかった。後半勝負と思っていたが、第3Qまでは何とかできたけれど。オンサイドキック失敗を含めプレーの完成度を高めないといけない。最後まで諦めずにやれたことは大きな成長。何が足りなかったかをコーチ陣と話し合ってその穴を埋めて、また甲子園に戻ってきたい」と捲土重来を期していた。

記事;福武金二(スポーツジャーナリスト)
写真;MIKANO (Pump Up 学生アメフト)
編集;畠中隆好(甲子園ボウルPJT)