関東大学選手権「あずまボウル」記者発表の席上で、内田正人監督は今年のチームの特徴を「若いチーム。3年目となる田中芳行コーチ、今年加入した長谷川昌泳コーチの指導のもと、選手たちが活躍してくれている。守備ではDB下水流裕太、井上佳(ともに2年)、1年のLB趙翔来(日大高)がはつらつとプレーしている。攻撃では1年生QB高橋遼平(大産大付)、WR松尾海太(4年)に期待している」と、話した。
「春の下級生は危なっかしかったが、能力の高い下級生を活かさなければ試合に勝てない」と、主将OL岩井悠樹。今年は、リーダーシップをもった上級生と高い潜在能力を持つ下級生が融合し、一体化した試合運びが特徴的だ。
このことを証明する出来事が、秋季リーグ初戦の横浜国立大戦だ。
試合会場にいた誰しもが驚いたのは、いくら格下相手とはいえ、1年生QB高橋(遼)をいきなり先発させたのだ。日大伝統のショットガンをどう操るのか注目される中、ランプレーを駆使して前半3TDをランで奪う。結局、このQB高橋(遼)からWR松尾海太(4年)へのTDパスなどで大量41点をあげた。
そして学生界屈指の大型ラインが居並ぶ強力守備陣は、横国大の攻撃をパス0ヤード、ランはなんとマイナス11ヤードと、完璧に抑え込んで完封した。
続く国士舘大戦でも、守備陣は当然のように国士舘大オフェンスを粉砕して完封。攻撃では、QB高橋(遼)がパスで26回試投17回成功262ヤード、2TDを獲得するなど、56点を奪う爆発力をみせつけた。
さらに関東学院大戦では、QB高橋(遼)が進化する。パスで19回試投14回成功させ273ヤード、4TDを奪う爆発力をみせて96-7で圧勝。
専修大戦では、さらに攻撃力が大噴火する。ファンブルリターンTDで先制を許すものの、その後のキックオフリターンで西村有斗(2年)が97ヤードのビッグリターンTDをあげ同点に持ち込むと、その後は日大の完全独走ペース。
強烈な破壊力をみせつける。
攻撃で8TD、インセーセプトとファンブルリターンにパントリターンで7TDと計15TDを奪う猛攻で、今季初の100点ゲームを達成。105-7と圧倒した。
そしてここから慶応大、中央大、明治大と続く3連戦が覇権を握るヤマ場。
慶応大戦もFGを許して3点を先取されたが、すぐに大型RB高口和起(2年)のTDランで逆転。その後も着実に得点を重ね18-3で慶応大を下す。
この試合で大活躍したのがスーパー新人LB趙だ。1QBサック、3回のロスタックルをはじめ、試合を通じて暴れん坊ぶりを見せつけた。
続く中央大戦では、QB高橋(遼)からWR松尾(海)のホットラインが、第1Qに連続2TDパスを成功させ14-0と試合をリード。結局各Qに追加点を奪い、結果的に48-0と圧倒した。
全勝対決となったBブロック最終戦、明治大との戦いも、59-14と大差での勝利をおさめた。この試合でもWR松尾(海)が2TDを奪う活躍をみせ、ルーキーの巨漢RB竹内豪汰(大産大付)がランプレーで2TDを決める。QB高橋(遼)は29回試投23回成功、324ヤード、4TDを獲得する今季のリーグ戦で最高のパフォーマンスをみせた。
守備は2TDを奪われたものの、明治大が得意とするランプレーをわずか24ヤードに抑え込んだ。
迎えた関東大学選手権「あずまボウル」はAブロックを全勝で制した宿敵・法政大との戦い。昨年、あと一歩のところで敗れた相手だ。
この試合もFGで先制されるも、QB高橋(遼)から右サイドでフリーになったWR岩松慶将(2年)にピンポイントで66ヤードTDパスが
決まって逆転。その後もK有輪七海(2年)が2FGを確実に決めて、追いすがる法政大を13-6で下した。
今年の日本大は、堅実で強力な守備陣がチームを支えている。法政大との一戦では、これまでにない素早い集まり、低くて鋭く速いタックルをみせ、法政大のランプレーを全員タックルでしばしばロスヤードに抑え込んだ。またパス守備でもDB陣が、果敢にパスカットして窮地を断ち切った。
リーグ戦の記録をみると守備はパス、ラッシュともに関東大学リーグ1部で第1位。1試合平均喪失112.6ヤードと2位の法政大に25ヤードもの差をつけている。
この守備を牽引するのが、QBサック王となった1年生LB趙に、同2位のLB岩本卓也(2年)、インターセプト第5位の佐藤礼一(3年)と井上佳(2年)。そして松尾佳郎(4年)、宮田直人(3年)といった強力ラインが相手攻撃ラインを破壊粉砕する。
1990年の第45回大会以来、勝てば23年ぶりとなる王座奪還まであと一つ。相手は伝統のライバル関学大、相手にとって不足はない。緑の甲子園にいままた赤い不死鳥が舞い降りる。
記事;門棚丈二(スポーツライター)
写真;関東学生アメリカンフットボール連盟
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)