真の法政時代到来へ。狙うは甲子園連覇のみ
今季の法政を見ていると、ようやく「真の法政時代到来」の兆しが見えてきた。
1992年、フリーズオプションを武器に20年ぶりに甲子園の地に返り咲いた法政大学トマホークス。93年こそ甲子園ボウル出場を逃すが、それ以後8年連続で関東を制覇し、関東学生フットボール界では、「法政時代」が到来していた。
しかし、それはあくまでも「関東内」での話。法政は甲子園で辛酸をなめ続けた。
94年から01年までの甲子園通算成績は1勝6敗1分。97年は終了間際に追いつかれて引き分け。単独勝利は01年のみで、どうしても甲子園ボウルでは勝つことができなかった。
そして、いつしか学生フットボール界で「西高東低」がささやかれる事態となった。
そうした状況に変化の兆候が見えたのは04年シーズン。この年から法政はショットガンオフェンスを本格的に導入する。導入直後はリーグ初戦で1部に昇格したばかりの横国大に敗北するが、徐々にプレーの精度が高まっていった。
その年の甲子園ボウルでは立命に敗れたものの、翌05年シーズンにはリベンジを果たし、4年ぶりに甲子園での勝ち名乗りを上げた。
スポーツの世界でこうした「チーム改革」が起きると、たいてい「監督が変わった」「強烈なキャプテンシーを発揮する選手がいた」といったマンパワーの結果に結び付けられる。しかし法政の場合は少し毛色が違う。
もちろんショットガン導入を決めた首脳陣や、チームをまとめ上げた幹部選手たちの力も大きい。だがそれ以上に「チーム全員の努力」が大きい。
法政は「学校に雇われたプロコーチがおらず、他の強豪チームに比べて不利である」といわれることが多い。しかし学生主体でチームを運営することにより、選手たちの「考える力」を向上させることができる。
さらに、法政独特のチーム運営形式は選手に対して全員一丸となって戦う意識も向上させていった。
なぜなら学生主体の運営では学生に任せられる部分が多いため、チーム内のメンバーひとりひとりが自分の役割を果たし、全員一丸となってなければ力を発揮することができないからだ。
今季のチームはまさにそうした全員一丸の取り組みが随所に垣間見られる。
昨季はDT伊倉、RB丸田、QB菅原といった個々のタレント力が目立っていた。しかし今季はさまざまな選手が出場し、試合毎に異なる選手が活躍し、戦力の底上げに成功した。
またQB田口のように出場機会が限られている選手であっても、フィールド上で自分の役割を100%果たしている。
今季の法政は近年では類を見ないほどの戦力を有している。しかし法政は単純に戦力が充実しているから強いわけではない。
「選手が自分たちで考え、チーム一丸となって戦う」というチームの伝統をしっかりと受け継いでいるからだ。そしてその伝統は90年代に甲子園ボウルでなかなか勝つことができなかったときも、02年に関東制覇が途絶えたときも、途切れることがなかった。
黄金時代を築くうえで重要な「チームに受け継がれる伝統」。法政にはこれが存在する。残るは「甲子園ボウル連覇」という結果だ。
今年の甲子園ボウルで勝利し、悲願の連覇を達成したときにこそ、「真の法政時代」が到来する。
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